僕の実家は戦前からの蕎麦屋で、都内の商店街で、かれこれ100年近く商売を続けている。客商売に向かない僕は早々に家を出て学者になってしまったが、店は弟が継いで、今も父母と一緒に切り盛りしている。実家のある商店街は長い不況と後継者難で大変な状況にあるが、今でも辛うじて下町風のご近所づきあいが残っている。そんな実家の父の話は以前にも書いたので、今回は公平を期して母の話を書こう。
ウチの母には少々困った癖がある。それは、家の近所に救急車や消防車、パトカーが来ると、きまって仕事も家事も放り出して、現場に駆け付けてしまう癖だ。何が面白いのか分からないのだが、サイレンが聞こえると、「また××のお爺さんかも知れない」「あの方向は〇丁目だ!」と、即座に駆けだしていってしまうのである。
噂によれば、連続放火事件などの場合、放火犯は必ず野次馬に紛れて火事現場に舞い戻るのだそうだ。だから、警察の現場検証では、火災現場の証拠を集めるだけでなく、放火犯が紛れているかも知れない野次馬の顔ぶれも、それとなく写真に収めるのだとか。
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source : 週刊文春 2024年1月4日・11日号