それにしてもMはなぜ俺の調べに対して、15年も喋らなかった事件の口を割ったのだろうか。俺自身、取調べの途中には諦めかけたこともあったほど、当初の態度は頑なだったにもかかわらず。
そのことについて考えた俺は、取調官としてMと対峙した経験から「2つの調べの姿勢」を学んだと思っている。
ひとつは、ホシのことを真剣に考え、親身になって付き合うことの大切さだ。
他の取調官がどんな調べのスタイルを持っているかは分からないが、俺の場合は怒鳴ったり脅したりという態度は取らない。
「あんな刑事、顔も見たくねえな。また今日も怒鳴られるんだな」
と、思われるよりも、
「ああ、あの刑事さんと喋ると楽しいなあ」
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source : 週刊文春 電子版オリジナル