歳をとると色々なことができなくなる。できることと言えばわずかに、シルバーシートに座る、老眼鏡をかけて本を読む、乳幼児健診を無視する、後期高齢者保険料を払う資格を獲得するなど、こうしてみると意外に多い。
他方、できなくなることは数えきれない。シルバーシートに座る、老眼鏡をかけて本を読む……、まで数え上げたところで、何を数えていたのかわからなくなる。
そんな境遇の高齢者をどう励ませばいいのか。高齢者は「前向きになれ」と言われても、将来にはいまより悪いことしか待ち受けていない。後ろ向きに過去にひたる方が安心だ。どんな過去でもいまよりはマシだ。何より、過去は好きなように作り変えることができる。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2024年6月6日号