獄中結婚を果たした夫に著者が接触したことを知った木嶋から、ついに手紙が届く。そこには著者を操ろうとする飴と鞭、そしていつもの手口がちりばめられていた。

 2023年12月1日、ホテルオークラの大広間は天井からのシャンデリアの灯りの下、来客が集い、ざわめきに包まれていた。

 出版不況と言われて久しいが、文藝春秋が開く恒例の忘年会は関係者を集めて盛大だった。印刷会社や製紙会社、他社の編集者、テレビ関係者、作家たち……。

 直前まで隣の部屋では菊池寛賞の授賞式が行われていたこともあり、その流れで参加している人たちも多かった。最近では出版社もインターネットの比重が大きくなり、オンラインによる記事の発信が増え、対談や座談会もYouTubeで流している。紙からネットへ、文字から動画へ。この流れは今後いっそう加速していく。そう思うと、この光景も妙にさみしく感じられるのだった。

 会場に知り合いは少なかったが、旧知の新潮社役員の姿を見かけて私から声をかけた。

「何を今は書いているんですか」

 という先方の、ごく社交辞令的な問いかけに、私は少し躊躇しつつ、この機会にと思い答えた。

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source : 週刊文春 2024年10月10日号