木嶋はどのようにして、詐欺をはたらき、人を殺し、死刑囚になるに至ったのか。1993年、飛び出すように故郷の北海道を後にした18歳。その東京での足取りを追う。
「高校にきた求人募集の中から、佳苗はケンタッキーフライドチキンを選んだ。私はすぐに佳苗に言った。『3日で辞めるんでしょ。それでフーゾクで働くつもり?』って。佳苗は、『そんなことないよ』と笑いながら言ったけれど。とにかく親から、別海から離れたがっていた。東京に行くために決めた就職だったと思う」(別海町の同級生)
1993年。1月、ビル・クリントンがアメリカ大統領に就任し、6月には、皇太子(当時)が外務省に勤務していた小和田雅子さんと結婚し、8月には自民党に代わって細川護熙を首班とする連立政権が成立する。
その3月、18歳の木嶋は北海道の別海町から上京した。
「意外でした。木嶋さんのところの佳苗さんが進学しない、就職したって聞いた時は。確か、クラスで一番最初に就職を決めたんですよ」(同級生の母親)
木嶋が通った当時の別海高校は、一学年の生徒数が百数十人。普通科と酪農科に分かれていた。木嶋は普通科に通ったが、進学にしろ、就職にしろ、東京に出る同級生は、ほとんどいなかった。
「本州は、外国みたいに思えた。札幌でも十分、遠い。北海道から出たいと思う子は少なかった」(別海高校の同級生)
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source : 週刊文春 2024年10月17日号