人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

 先日、量販店のおもちゃ売場でトンピーを見つけ、思わず買った。

 トンピーの正式名称は、『リズムでともだち こぐまのトンピー』である。

 随分、箱も退色していて、それが最後の一品だった。平日の午後、レジ前には誰もいなくてすんなり買えたが、その時の男性店員は新人なのだろう、マニュアル通り、「プレゼント用の包装紙にしますか?」と、聞いてきた。きっと、おじいさんが孫にプレゼントするのだと思ったのだ。僕は、

「いや、そのままでいいです」と、言ってエコバッグを見せた。お気に入りのカルピスとアフタヌーンティー・リビングがコラボした青地に白い水玉模様のやつだ。店員は、「じゃ、箱にシールだけ貼らせて頂きますね」と、言って、商品を手渡そうとした。その時、僕はふと心配になって、

「あ、そうだ。電池は付いてましたっけ?」と聞いた。

 実は随分昔に一度、買ったことがあったのだが、そこまでは覚えていなかったので。すると、「ちょっとお待ち下さい」と、言って店員は慌てて奥に引っ込んだ。その間、僕は箱のどこかに表示があるのではと思い捜したが、小さな文字は老眼でよく読めなかった。

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source : 週刊文春 2024年10月17日号