いまアメリカで大統領選挙を取材中です。まずロサンゼルスから入国したのですが、税関・国境警備局の職員たちがしっかりドジャースの帽子をかぶっていたのには笑えました。ロサンゼルスは大統領選挙どころではなく、ニューヨーク・ヤンキースとの対決になったワールドシリーズで盛り上がっています。

 ただホテルでテレビをつけると、状況が一変します。テレビCMは選挙がらみばかりです。CNNのようなニュース専門チャンネルは一日中選挙のことばかり取り上げていまして、ここに選挙がらみのCMはあまり出てこないのですが、地上波のCBSやNBC、ABCなどでは、ドラマやクイズ番組の合間に、ひっきりなしに選挙のCMが流れます。

 といっても大統領選挙ではありません。ロサンゼルスがあるカリフォルニア州は民主党の牙城。ハリスが圧勝することは目に見えているので、民主党も共和党も大統領選挙のCMは流さないのです。

 一方、連邦議会の下院議員とカリフォルニア州の下院議員の選挙が同時に実施されるため、こちらはCMの洪水です。アメリカは対立候補を攻撃するネガティブキャンペーンが認められているため、ウンザリするほどの悪口合戦です。

 たとえば民主党系のCMでは、共和党の下院議員候補が過去に「中絶は例外なく禁止だ」という発言をした時のビデオを流し、それに対し女性たちが口々に「自分たちの身体のことは他人から介入されたくない」と発言し、こんな人物を当選させるなと主張するのです。

 一方、共和党系のCMは、民主党のせいで「不法移民が多数流入してきて治安が悪化している」というイメージ映像を流して、「不法移民に断固たる態度をとる我が候補に一票を」と呼びかけます。これほどのCMの洪水では金がかかるわけだと思います。

 日本の常識からすると驚くのは、こうしたネガティブキャンペーンで、テレビニュースの映像が使われていることです。日本ですと、どこかの放送局が流した映像を勝手に使うことはできません。使用の許諾が必要なのですが、各局とも選挙のCMに使われるのは断るでしょう。

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source : 週刊文春 2024年11月7日号