「大関の地位を汚さぬよう、『唯一無二』の力士を目指し、相撲道に精進します」

　9月25日。紋付き袴姿の大の里（24）は、大関昇進伝達式で力強く口上を述べた。第72代横綱・稀勢の里こと師匠の二所ノ関親方（38）のもと、その3日前に閉幕した大相撲秋場所で2度目の幕内優勝。関取の象徴たる大銀杏をまだ結えない髪の短さが、出世の早さを物語っていた。

　新大関として迎える九州場所を前に、大の里は「週刊文春」の独占インタビューに応じた。晴れの舞台であの四字熟語が用いられた経緯をこう振り返る。

「唯一無二には『これ以上の存在はいない、そんなお相撲さんになる』という意味が込められています。秋場所で優勝が決まって、高校時代の恩師である村山先生に相談をして決めました」

　恩師とは、新潟県に相撲留学した中学時代から師事した県立海洋高校相撲部監督（現・新潟県職員）の村山智明さん（45）のこと。「唯一無二」の四文字は、故郷の石川県津幡町に住む父の中村知幸さん（48）が、相撲の道に進む我が子に込めた願いでもあった。

「村山先生から、父が大切にしているその言葉を提案されて、ピッタリだなと思い、伝達式で絶対にこれを使おうと。応援してくださる方、相撲を見ている子供たちにも『自分たちは唯一無二の存在』だと気付いてほしいと思っています」

スピード出世を支えた“親方の言葉”

　日本体育大時代、2年連続のアマチュア横綱に輝いた大の里（本名・中村泰輝）は、昨年5月の夏場所、幕下十枚目格付出で初土俵を踏んだ。付出とは、アマ時代に優秀な成績を収めた力士の地位を優遇する制度。初土俵から所要9場所での大関昇進は、昭和以降で最も早い。新入幕から数えて所要5場所も、年6場所制となった1958年以降、最短の記録だ。

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