人権尊重を掲げる表の顔と、人権蹂躙を繰り返していた裏の顔のあまりの落差が衝撃的な、フォトジャーナリスト広河隆一氏(75)による性暴力問題。

「週刊文春」19年1月3日・10日号で私は、広河氏が15年間にわたり編集長や発行人をつとめた報道写真誌「DAYS JAPAN(デイズジャパン)」(以下DAYS)の元ボランティアなど7人の女性たちによる、性暴力・セクハラ被害の証言を記事にした。同2月7日号では、広河氏のもとでアルバイトをしていた女性が海外取材に同行した際に、2週間にわたって性的暴行を受けたという証言について書いた。

DAYS最終号は「性暴力検証号」に

 DAYSを発行する株式会社デイズジャパンは、昨年末に初報が出ると、「広河氏が被害者の方々の尊厳を傷つけてしまった」と詫び、広河氏を代表取締役から解任。なにが起き、どうして続いたのかを検証し、DAYS最終号(同誌は今年3月号での休刊が決まっていた)で検証結果を公表すると表明した。

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広河氏のコメント

 だが、この「検証」は、少なくともこれまでは(そしておそらくこれからも)、まともなものとはいえない。以下、理由を説明しようと思う。

検証の「責任者」になった弁護士を2週間で解任

 デイズジャパンが以下の「コメント」を出して検証に取り組む考えを示したのは、週刊文春の初報が出て5日後の昨年12月31日だった。

「今回の報道を機に就任した弊社代理人を責任者として、広河氏個人の過去の言動による被害実態について調査を行うとともに、広河氏を絶対化させてきた会社の構造・体質についても、役員など関係者への聞き取りなどの調査を行っているところです」

 ところが今年1月13日、デイズジャパンは検証の「責任者」に任命した馬奈木厳太郎弁護士を解任しているのだ。先ほどのコメントを出してからわずか2週間足らずで、である。

 馬奈木氏の解任理由をデイズジャパンに問うと、新たな同社代理人である竹内彰志、稲村宥人両弁護士が、「より適当な代理人を検討した(結果、両人が代理人になった)」と答えた。どういう点で両人が「より適当」なのか尋ねたが、説明はなかった。