「ペドフィリア」とは、幼児を対象とした性的嗜好のことである。この言葉を聞いて、カトリックの不祥事を想起する人は少なくないだろう。なぜならば、現在、欧米で司祭(神父)による少年への性的虐待問題が相次ぎ、カトリックの総本山・バチカンが世界的な批判に晒されているからだ。
カトリックのペドフィリア事件が発覚したきっかけは、2002年、アメリカのボストン・グローブ紙による大々的な報道だった。同紙によって、ボストン教区司祭が純粋な少年を次々と“捕食”していることが明らかになる。「司祭にやられた」と訴えた被害者は30年間でのべ130人にも上った。この司祭の蛮行は、アカデミー賞を受賞した映画『スポットライト 世紀のスクープ』でも描かれている。
問題は他の国々へも飛び火する。ポーランド、アイルランド、オーストラリア、ドイツ……あらゆる国々で同様の案件が発覚し、批判の矛先はバチカンとローマ教皇にまで向けられた。
だが、この間、日本だけはこの問題を「対岸の火事」として眺めつづけてきた。というのも、「日本人にもペド被害を受けた人がいるのではないか」という漠然とした噂はあったものの、これまで当事者が名乗り出ておらず、事件化することがなかったからだ。
そんな中、ノンフィクション作家の広野真嗣氏が「文藝春秋」3月号に「カトリック神父『小児性的虐待』を実名告白する」という記事を寄稿した。広野氏は、かねてからこの問題について取材を行っており、今回、日本人のペドフィリア被害者・竹中勝美氏(62)へのインタビューに成功したのだ。
竹中氏は、幼少期を過ごした児童養護施設「東京サレジオ学園」でトマス・マンハルド神父から繰り返し性的虐待を受けていた。折しも2月21日から3日間、ローマ教皇フランシスコは性的虐待をテーマにした会議を開催する予定。日本のカトリック界は対応を迫られることになる。