水面下にはもっと多くの被害者が
広野氏が解説する。
「竹中さんは、カトリック神父からペドフィリア被害を受けたことを実名で告白した初めての日本人です。おそらく水面下にはもっと多くの被害者がいます。2004年に日本のカトリック中央協議会が実施したセクハラに関する匿名のアンケートによれば、『身体的接触の強要』を訴えた人が17名もいた。しかしその後、調査は一度も行われず、日本人の性的被害の全容は明らかになっていません」
竹中氏は広野氏のインタビューを受けた後、「単なる暴露で終わらせるべきではない」という思いから、2月6日付で「東京サレジオ学園」の母体であるサレジオ修道会と、日本のカトリック中央協議会宛に書簡を送付したという。竹中氏は「日本における性的虐待被害を解明するために、(サレジオと中央協議会には)第三者委員会を設置して徹底した事実関係の調査を行って欲しい」と語る。
「昨年のクリスマス、カテドラル教会の深夜ミサに参加しました。ミサの間、ずっと神に問い続けました。神の代理人から性虐待を受けた私は、どうしたらいいのでしょうか。カトリック神父による性虐待を告発する一人の信者と、それを隠蔽し続ける日本のカトリック教会。神の正義はどちらにあるのでしょうか? 何が神の御心に適う行動なのでしょうか。祈りの中で私は、神は私とともにあると確信し、この問題から目をそらさず立ち向かうことにしました」
竹中氏はそう語り、忌まわしい記憶を手繰り寄せ始めた――。その被害の詳細は「文藝春秋」3月号の広野氏の記事に、克明に描かれている。