文春オンライン

“振り切った女優”山口紗弥加「佐野史郎さんは私の中に“冬彦”を見たのかも……」

山口紗弥加さんインタビュー#3

note

もしかして、私の中に、冬彦を、見た……?

――『ブラックスキャンダル』でも『絶対正義』でも演じているのは“狂気の役”じゃないですか。佐野さんも「冬彦さん」とか狂気を感じさせる役が印象的で……。

山口 もしかして、私の中に、冬彦を、見た……?? ええっ、やだ。あんな怖い、あんな振り切った演技はできないです。私の中にあんなに激しいものはありません(笑)。

――でも『絶対正義』では山口さん演じる範子の狂気にドキドキして。「怖いもの見たさ」で次の週を早く見たくなります。

ADVERTISEMENT

山口 それはうれしいことです。人と同じことをしてたって私は生きない、生かせない。ということを教えてくれたのが、今のマネージャーです。ほんとに猟奇的な役ばっかり引き受けてくるんですよ(笑)。でも、そういう役の方が、血が騒ぐ。勝手に身体が動いていく。

 

――やっぱり佐野さんの血を少し感じます。

山口 アハハハ。やっと私が生きる場所を見つけられたというか。楽しいです。自分で言うのもなんですが、生き生きしてる。やっぱり人は人に生かされているんだなと思って。自分では気づけない新たな自分を発見した喜びはすごくありましたね。

――ちょっと話は変わるんですけど、SNSで不謹慎狩りみたいなことがあって、たとえばタレントさんが地震や大雨の日に、たまたま投稿が重なっちゃって「不謹慎だ」みたいな。そういう時代の空気があるから『絶対正義』のように正義のモンスターが出てくるドラマが面白いと思うのですが、そういえば山口さんってSNSは?

山口 やってません。

――公式アカウントないですよね。なぜでしょう。

山口 私は作品を見ていただきたくて。演じる役に、悪影響をもたらしたくない、というのが一番かも。何の先入観もなく、私が演じる人間を見てもらいたい、その思いです。

――それ以外のことを発信する必要はない。

山口 私自身はそう考えてます。でも、それについてもいろんな人がいて、いろんな意見があっていいと思うんですよね。だから、私が演じる範子の度を超えた正義も一つの正義として受け止めてもらえたらいいなと思って。

 多様性が求められている社会の中で、多様性を求めているくせに不寛容だな、と思うことも多々あって。もちろん人を殺めたり、誰かを無闇に攻撃したり、傷つけたりということはよくないことだけど。エンターテインメントとして愉しんでいただきつつ、どうやったらこの一つの社会で共存共生できるかということ、多様性、寛容についても思いを馳せていただけたら……『絶対正義』がそんな力強い作品になれたらいいなと願い、祈るような気持ちでいます。


写真=榎本麻美/文藝春秋


#1 女優・山口紗弥加が明かす「『連ドラ60本も主演なし』の私を支えた社長のメール」
http://bunshun.jp/articles/-/10848
#2 25年目で初主演 山口紗弥加「蜷川幸雄さんの『女優やめんなよ』が転機だった」
http://bunshun.jp/articles/-/10849

やまぐち・さやか 1980年2月14日、福岡県生まれ。1994年『若者のすべて』で女優デビュー。多くの映画やドラマ、バラエティ、舞台などで活躍。代表作に連続ドラマ『ようこそ、わが家へ』『コウノドリ』『モンテ・クリスト伯』など。昨年『ブラックスキャンダル』で連ドラ初主演を果たし、『絶対正義』で2クール連続の主演を演じている

INFORMATION

オトナの土ドラ『絶対正義』

毎週土曜日 23時40分~24時35分
(東海テレビ・フジテレビ系)

「私、間違ったこと言ってる?」――正義のモンスター・範子が周囲の人々を翻弄し、運命を狂わせていく恐怖を描く、衝撃の心理サスペンス。

出演 山口紗弥加 美村里江 片瀬那奈 桜井ユキ 田中みな実 ほか

“振り切った女優”山口紗弥加「佐野史郎さんは私の中に“冬彦”を見たのかも……」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー