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誰も教えてくれない「狩猟」のはじめかた――予想外の「障壁」ばかりだった

愛犬からの拒否、警察による近隣住民の聞き込みも……

2019/03/03
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猟をする場所がない

 念願の空気銃を得たものの、猟期開始まですでに1ヶ月を切っていた。しかし、具体的な猟場について、ほとんど情報を持っていない。

 銃猟のできる場所は、特に東京近郊では限られている。狩猟者に配布される鳥獣保護区等位置図(通称ハンターマップ)は、猟具ごとに狩猟できる場所が記されているが、罠猟や網猟が鳥獣保護区以外の場所ではほぼ可能であるのに対して、銃猟禁止区は広く設定されている。下は千葉県北部のハンターマップだが、着色されていない部分が銃猟のできる場所である。筆者の住む東葛地域では、野田(旧関宿町含む)に1ヶ所、柏(旧沼南町)に1ヶ所の計2ヶ所しかない。

千葉県鳥獣保護区等位置図(千葉県庁サイトより)

 そして、これはあくまで「法的にできる」だけであり、現実的にできるかはまた別の話だ。人や人家が近い場所ではできないし、国有林での狩猟は入林届が別途必要で、私有地は様々な制約がある。宗教施設のような厳粛さを必要とする周囲もダメだ。

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 ハンターマップに加え、Google Mapやストリートビューを使い、銃猟に向いていそうな場所を探す。人家から離れ、人目もなく、適度に田畑や木々や草原があるような場所がいい。この感覚は、中学生の頃にやっていたサバイバルゲームができる場所を探すのに似ていたが、それよりもずっと条件は厳しい。

千葉県北西部で銃猟できる場所の一例。高圧線に注意

猟場がなくなっていく

 しかし、そうやって見つけた場所でも問題が出ることがある。茨城県南部に数名で銃猟に行った際、獲物が見つからず場所を変えようと歩いている最中、近隣住民から「ここでは狩猟自粛のお願いの札を立てている」と注意を受けた。その札を見た記憶はなかったが、その場は謝罪し立ち去ると、駐車した場所の近くに県が立てた「銃猟注意」の看板があった。駐車した際、銃猟ができる場所と皆で解釈したが、その住民の方は自粛と考えていたようだ。しかし、住民意識は無視できるものではない。結局、この場には二度と来ないことにして立ち去ったが、それは猟場が一つ減ることを意味していた。

 また、近年特有の現象が、猟場を奪っている事例に多く遭遇した。数年前の空撮写真では平坦な草原だった場所が、太陽光発電所になっていた例を茨城の林から長野の山中まで多く見かけた。保護区や銃猟禁止区は年々増えていくし、山林からも猟ができる場所が消えつつある。