文春オンライン

「復興以上に大事なのが……」で桜田元五輪大臣更迭 なぜ政治家は震災で失言をしてしまうのか

五輪相や復興相、元都知事まで

2019/04/18
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桜田義孝 五輪相
「いしまきし」

読売新聞オンライン 4月10日

 桜田氏は「復興以上に大事なのが高橋議員だ」と発言した前日の9日に開かれた参院内閣委員会で、復興五輪イベントが3月に開かれた宮城県石巻市について「いしまきし」と言い間違えて謝罪した。1分15秒ほどの答弁の間に3回間違えたのだから、本当に読み方を知らなかったのだろう。東日本大震災による石巻市の死者・行方不明者は計3972人で、被災自治体では最多となる。

 桜田氏に質問した自由党の木戸口英司氏は「政府は都合のいい時に『復興五輪』と言うだけで中身がスカスカなのが分かった」とコメント(河北新報オンライン 4月10日)。秋田県の詩人・エッセイストのあゆかわのぼる氏は「被災地を知らず、知ろうともしていなかったことを物語っている」と指摘している(河北新報オンライン 4月12日)。

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桜田義孝 五輪相
「まだ国道とか交通、東北自動車道も健全に動いていたから良かったが、もし首都直下型地震が来たら交通渋滞で人や物資の移動が妨げられる」

共同通信 3月24日

首相官邸に入る桜田義孝五輪担当相=3月26日、東京・永田町 ©時事通信社

 桜田氏は今年3月にも震災関連で失言をしている。地元である千葉県柏市の集会で、東日本大震災の津波被害について事実誤認の発言を行っていた。

続く失言は、関心の欠如のあらわれか

 実際は震災直後、沿岸部を通る国道は通行不能で、東北自動車道も緊急車両を除いて通行止めになっていた。桜田氏は翌日の参院予算委員会で謝罪。安倍首相は「発言の正確さには十分に留意して取り組んで欲しい」と擁護していた(朝日新聞デジタル 3月26日)。「いしまきし」と並んで、桜田氏がまったく被災地に関心を持っていなかったことがよくわかる発言だった。

 なお、桜田氏が出席していたのは憲法改正をテーマにした集会で、自民党改憲4項目に盛り込まれた緊急事態条項を念頭に「改憲しなくても日常生活は困らないと言う人がいるが、大きな間違いだ」と主張。震災に触れた上で「やはり非常事態(の条文化)はやるべきだ。いざというときに国民生活を守るための法律を制定しておかなければならない」と語っていた(共同通信 3月24日)。

 緊急事態条項とは、大震災などの非常時に内閣だけで法律をつくったり、改正したりできるようにするものだが、桜田氏のように事実誤認だらけの上、被災地に関心のない大臣にそんな権力を持たせても……という気がしてならない。