安倍内閣が大揺れだ。これまで数々の失言を繰り返してきた桜田義孝五輪相が、過去最大級の失言で更迭されてしまったのだ。「復興五輪」とされる東京五輪まで、あとわずか1年3カ月という段階でなぜこのような発言が出てしまうのか? これまでの震災関連の失言などを含めて考えてみたい。
桜田義孝 五輪相
「復興以上に大事なのが高橋議員だ」
NHK政治マガジン 4月10日
10日、桜田義孝五輪相は岩手県出身で自民党の高橋比奈子衆院議員のパーティーで、「復興以上に大事なのが高橋議員だ」と発言。桜田氏は「被災者の気持ちを傷つけた責任を取りたい」として、安倍晋三首相に辞表を提出し、受理された。事実上の更迭である。
全文はこうだ。
「東京オリンピックは来年で、世界中の人が日本に来る。東日本大震災ということで、岩手県にも世界中の人が行くと思うので、おもてなしの心を持って復興に協力していただければありがたい。そして、復興以上に大事なのが高橋さんなので、よろしくどうぞお願いします」
前半はまともだ。なぜその一言を付け加えてしまったのか。
問題となった「がっかり」発言をギャグに
桜田氏は今年2月、競泳の池江璃花子選手が白血病を公表した際、「がっかりしている」と発言して批判を浴びたが、このパーティーでは聴衆に向かって、「(乾杯前のあいさつが続き)がっかりしているんじゃないのか。『がっかり』という言葉は禁句なんですけど」と冗談めかして語っていたという(朝日新聞デジタル 4月12日)。
反省がないというか、そもそも何について批判されていたのか理解していなかったのだろうか。パーティー後、記者に発言を問われた際は、「そんなこと言っていない」ととぼけていたという(日刊スポーツ 4月11日)。
読売新聞は社説で「1強の緩みが蔓延している」と批判(4月12日)。産経新聞は社説で「人を見る目はないのかと批判されても仕方あるまい」とまで言った(4月12日)。また、「政府の五輪軽視としか映らない」と指摘しているが、「五輪軽視」というより「被災地軽視」ではないだろうか。自民党岩手県連の岩崎友一幹事長は「総理以下、各大臣にとって復興は最重要課題のはず。被災地を愚弄しており非常に遺憾で論外だ」と痛烈に批判した(朝日新聞デジタル 4月11日)。
安倍首相はこれまで失言を繰り返してきた桜田氏を「適任」とかばい続けてきたが、今回は「任命責任は、もとより総理大臣の私にある」と責任を認めた。しかし、14日に被災地の福島県を訪れた安倍首相は、東京電力福島第1原発や東京五輪の聖火リレーのスタート地点となる「Jヴィレッジ」などを視察したが、桜田氏の問題には触れることはなく、謝罪も行わなかった(日刊スポーツ 4月14日)。