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ファイターズの「ショートスターター」は限界ではないか?

文春野球コラム ペナントレース2019

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オープナー、ショートスターターの難しさ

 僕は今季、ファイターズが採用してきたオープナー、ショートスターターの難しさを思う。話をわかりやすくするため甲子園を振り返ろう。現在の高校野球はピッチャーの消耗度に配慮する意味でも、相手打線を幻惑する意味でも継投策が基本だと思うのだ。主戦級のピッチャーを何枚か持ってるチームに優位性がある。

 が、奥川恭伸(星稜)を見てるほうが気持ちが入る。これは僕の頭が古いのかもしれない。が、現にそうなのだ。今大会は智辯和歌山戦がすごかった。本格派のピッチャーが回を追うごとに迫力を増し、ズバズバ行ってるときの快感ったらない。あれは観客も入り込む。たぶん選手らも入り込む。頭が古いということなら皆、古いんじゃないかと思う。奥川君が智辯和歌山戦に登板して、初回を3者連続三振に切って取り、堂々と降板したとして同じようにしびれただろうか。

 ファイターズの加藤貴之、堀瑞輝は本当にいいピッチャーだ。研鑽次第で長くプロの第一線でやれる力を持っている。が、現状、予告先発が加藤、堀と発表されるとファンはテンションが下がっている。あぁ、またか、あれか。結果がともなっていればいいのだろうが、8月の惨状だ。頭が古いのだろうが、皆、気持ちがつくれない。

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 皆、有原航平に期待するのだ。有原のエンジンがかかってるときの「ピッチャーらしさ」にしびれる。有原で負けると連敗が止まらない。これは「投手分業制」の過渡期の産物なのかもしれないが、小刻みな継投を低く見てしまう。入り込めない。しまいには(頭ではわかっていても)加藤や堀を「二線級のピッチャー」とうっかり勘違いしてしまう。起用が成功したとしてもつい「先発が早くつぶれた負け試合」のように錯覚してしまう。

皆、有原航平に期待するのだ ©時事通信社

 これまで書いたものをご覧になってる方はわかると思うが、僕は典型的な「出されたものをおいしくいただく」タイプだ。滅多なことじゃ店側にクレームはつけない。だから今シーズンも出されたオープナー、ショートスターターをおいしくいただきたいと思う。が、次第にやってる側も、見てる側もテンションが落ちている。たぶん僕が言わなきゃ誰もメディアで指摘しないだろう。チームの元気、球場の雰囲気は野球そのものを形づくる。どんよりしてちゃ勝てるものも勝てないと思う。

還暦なので、赤いSHINJO。試合に負けても、愛は不滅だ。 ©えのきどいちろう

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