あとで何かを振り返る時に、その日の空や空気も一緒に思い出すことがある。2019年の仙台最初の試合を思う時もきっとそうなるだろう。あの雪景色は北国のチームの新しいチャレンジへのはなむけだったんだと私は思う。
今年も文春野球コラムで書かせていただく事になりました。北海道の斉藤こずゑです。えのきど監督のシモベとして、出来る限りいい仕事が出来るように驀進致しますので、読者の皆様、どうぞよろしくお願い致します。たくさん美味しいお酒が飲めるシーズンになりますように。
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ファイターズは今年も開幕は札幌ドームで迎えた。
開幕前に私が番組で合言葉のように話していたのは、「オープン戦の結果は忘却(最下位)」「去年の開幕カードの事も忘却(3連敗)」、とにかく嫌なことは何もかも忘れて臨むこと。これが功を奏したとは言わないけれど、ファイターズはバファローズに対し2勝1分、負けなしという素晴らしい開幕ダッシュに成功。特に中田選手は初戦のサヨナラホームランも含めて3試合で9打点という大暴れでファンを沸かせてくれた。
そして、2カード目は、去年と同じ仙台。この時期の仙台の試合は夜の寒さを考慮して平日でもナイターより早い時間に試合開始が設定されるので、今年も4月2日(火)の初戦は16時プレーボールだった。
雪が降りしきる楽天生命パーク
しかし、この日の仙台は午前中のうちに最高気温の7.7℃を計測してしまって、その後は気温が下がるばかり。冬。いくら防寒しても、いくら練習で体を動かしても、選手の体はなかなか温まらない。後で聴けば両チームのシートノック中には既に吹雪く場面もあったという。そして試合開始の16時には気温は2.8℃にまで下がってしまう。
この日、私は札幌のスタジオで仙台の試合のラジオ中継を受けながら、映像も同時に見ていた。札幌も今年は春が遅い。その日もほぼ仙台と同じ気温。だから思った。これは、外で野球をする気温ではない。2℃と言えば、ダウンを着てマフラーを巻いて手袋をはめてもまだ寒いくらい。
北海道の人は「寒さに強い」と思われがちだけど、それは勘違いで、「寒さに慣れている」だけである。家の中は頑丈な作りで暖かいし、外に出る時は絶対に寒い思いをしないように完全防備で出かける。なんならコートの下は少し汗ばんでるくらいの時もある。だから私は思った。選手の皆さん、そんな恰好でそこにいてはいけない。
試合開始、1回の表を辛島投手にさっさと三者凡退に片付けられて、加藤投手がマウンドに向かうと、楽天生命パークには雪が降ってきた。本当に「あっ」という間にバッテリー間の視界、審判の視界を奪って、加藤投手が4球目を投げたところで中断。試合が始まってまだ11分しか経っていなかった。
ベンチに用意されたストーブ、雪を防ぐためにグラウンドに敷かれるクリムゾンレッドのシート、作業する人の頭に降り積もる雪、吹雪いてるから何がなんだかよくわからないモニターの映像。これってプロ野球中継? と目を疑った。
仙台では2006年、フルキャストスタジアム宮城と呼ばれていた頃以来の珍事だとか。結局、22分中断されて、その後は雪が降っても試合は継続された。もちろん気温が上がることはないまま。