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大阪城北詰で40年続く“看板のない中華料理屋” 思いの詰まった「450円のラーメン」が味わい深かった!

B中華を探す旅――大阪城北詰「桃園」

2021/01/22
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「もう古いんですよ。これ、京都マラソンとかだからね。あと、よう知ってるのは高石ともやさんとか。ものすごええ人でね。高石ともやさんとか、有森さんはね、なにかあったときには会ったりしますけど。こんなような、ざっくばらんなお店なんで(笑)」

 となると、話題が話題を呼んでテレビの取材依頼もありそうだが……。

「そういう食べ歩きみたいな番組の人が食べに来はって、『取材とか、あちこちやってるんですけど』いうて。でも、もうややこしかったら、うちもパスしたりとかね」

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最後にラーメンをいただく!

 つまり前回の「さか市」に次いで、またしても取材拒否の店からお話を聞けたということか。だとすればうれしい限りである。なお余談だが、看板がない理由についてお聞きしたところ、「この間、看板を取ったとこ」なのだそうだ。

「台風で飛んでしもうて、不細工やから看板取って。もう地震(阪神大震災)でガーンとやってるしね。ちょっと歪んでるよね。だから、家が古くて歪んでるんじゃなくて、地盤が傾いちゃってて。それでもなんとか暮らしてるから(笑)」

 地盤が傾いても経営が傾かないのは、芳友さん、奥様、お母さんの人柄のおかげなのだろう。そこで最後に、思いが詰まったラーメンをいただくことにした。

「こってりしたのがいい人は、頼りなく感じるかもしれない」とおっしゃるラーメンの出汁は、鶏と豚のみ。具もメンマはなく、チャーシューとネギ、もやし、煮卵だけが載る。麺は太陽製麺という製麺会社の、伸びにくい卵入りの麺だ。

 
 

 濃厚に見えるスープは、意外なくらいにすっきりしており、それでいてしっかりとした“芯”のようなものを感じさせる。喉ごしのいい細めの麺も、スープといい相性だ。肉の旨味が凝縮されたチャーシューも、固めの煮卵も自家製ならではの味わい。総じて、ありそうなのに、どこにもなさそうな味だ。

 ところで、我々の近くでいろいろ説明をしてくれていたお母さんは、話のバトンを芳友さんに引き継いだあと、いつの間にか席を外していた。どこに行ったのかと思ったら、入り口近くのレジの脇にポツンと座っている。

 その穏やかな表情には、店を受け渡した息子への信頼感が表れているように思えたのだった。

 

撮影=印南敦史

INFORMATION

​桃園
大阪府大阪市都島区片町1-9-34
営業時間 11:00~14:00
定休日 土日祝日

​ビール(缶) 300円
ラーメン 450円
ギョーザ(7個) 350円
エビ玉 650円

大阪城北詰で40年続く“看板のない中華料理屋” 思いの詰まった「450円のラーメン」が味わい深かった!

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