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阿倍野の路地裏に佇む“地元の中華料理屋” 70代店主が作る「フライメン」はビールとの相性抜群だった!

B中華を探す旅――阿倍野「さか市」

2020/12/25

「“B中華”を大阪でやってくださいよ」

 千日前で「黒紺(ブラコン)」というヘンな名前のソウル・バーをやっている大阪の友人から、そうプッシュされ続けること半年以上。たしかに大阪には、B中華の定義に合いそうな店がたくさんありそうな気がする。

 そこで「大阪都構想住民投票」間際、新型コロナ第3波到来直前の10月下旬に、「B中華を探す旅・大阪編」を決行することになったのだった。2泊3日で3軒を訪ねようという、高血圧化必至のチャレンジである。

 今回から1軒ずつ、その取材の成果をお伝えしようと思う。

「あべのハルカス」から数分歩いた路地で

 御堂筋線の天王寺駅から「あべのハルカス」を抜けて南下すると、ものの数分で人通りが少なくなってくる。しかも目指す店は、通りからさらに一本入った路地に佇んでいるのである。

 背後にそびえ立つ高層ビルの華やかさとは対照的な、いい感じの風情が漂う「さか市」という店。オレンジ色の日除け看板に、「中華料理」と白く抜かれた暖簾と提灯。メニューが書かれた黄色い立て看板の後ろには、ビールケースが積んである。

 

「B中華って、こういうことでしょ?」

 大阪の友人が、店を指差し誇らしげにいう。いや、まだわからないぞ。そもそも、いかにも受け入れてくれなさそうな雰囲気ではないか(小心)。だが、恐る恐る足を踏み入れると途端に、そんな不安は確信へと変わっていったのだった。

カウンターの丸椅子にもこだわりが……?

 右側に厨房があり、向かい合う真っ赤なカウンターには、同じく赤い丸椅子が並んでいる。カウンターのお客さんは(おそらく無意識のうちに)ソーシャル・ディスタンスを保っており、その向こうで店主が黙々と鍋を振り続けている。

 カウンター上部の角部分には、うずら卵水煮缶の空き缶がセットされている。あれは、垂れてくる油を受け止めるものだろう。

 

 そんなツッコミどころも含め、とてもいい雰囲気だ。

 しかし、お客さんが座るその丸椅子に、ちょっとばかり違和感を抱いた。背もたれがついているのだが、いかにもあとから無理やりくっつけたような感じなのである。

 
 

 つまりは “カスタム仕様”なのではないかと、そんな、どうでもいいことが気になって仕方がなかったのだ。

 もしかしたら、それもこだわりのひとつなのかもしれない。