文春オンライン

阿倍野の路地裏に佇む“地元の中華料理屋” 70代店主が作る「フライメン」はビールとの相性抜群だった!

B中華を探す旅――阿倍野「さか市」

2020/12/25
note

まずはビールと餃子を注文!

 左側には、やはり赤い4人がけのテーブル席が3卓。入店時には、サラリーマンとおぼしき3~4人のグループが1組いたが、以後も入れ替わり立ち替わり、グループ客がテーブル席を選ぶ。もちろんカウンターも、一定のペースで客の顔が変わっていく。

 そう、14時を過ぎていて、しかも場末と呼んでいいロケーションであるにもかかわらず、そこそこ人の出入りがあるのだ。明らかに地元に根づいた店であり、間違いなくB中華だといえそうだ。

 手前のテーブル席に落ち着いて壁の黄色いメニューをチェックし、まずはビンビールと餃子、ニラ玉、それからブタ天を注文。お母さんが持ってきてくれたビールをグラスに注ぎながら、大阪の友人がいう。

ADVERTISEMENT

 

「知ってます? 大阪の店では、ビールといえば大瓶なんですよ。しかも“おおびん”じゃなくて“だいびん”っていうんです」

 へー、それは知らなかった。やはり関東と関西では、いろいろ違うところがあるんだなぁ。この店には「ビンビール小」もあったけれど、それは例外なのかもしれない。ともあれ、東西の違いは他にもいろいろなところにありそうだ。事実、以後登場した料理の数々も、どこか東京のそれとは様子が違うものが多いのだった。

 まずはブタ天のボリューム感である。中華柄がはげかかった皿に5個も積み上がっていて、見た目のインパクトがすごい。最初はちょっと圧倒されたが、塩胡椒をつけて食べてみればこれが最高。ほどなくお目見えした餃子、追加で注文したニラ玉のうまさとも相まって、ビールがどんどん進んでいく。

 
 
 

「フライメンって、そばを揚げたやつ」

 しかし関東との差という点では、どうしても無視できなかったのは「フライメン」である。東京でいうかた焼きそばなのだろうと想像はつくものの、そんな名称は初めて見た。友人に聞いてみても、「揚げの焼きそばちゃいますか? ようわかんないけど」と曖昧な答えしか返ってこない(「ようわかんないけど」「知らんけど」は、大阪人の愛すべき得意技)。

 そこでお母さんに尋ねてみたところ、「フライメンって、そばを揚げたやつ」とのシンプルな返答。まぁそうだろうなと思ったが、気になって仕方がなかったので頼んでみることにする。

 
 

 さんざん食べたあとだったので、さらに“締めのラーメン”を食べることはできそうもないが、ここは未知の一皿を優先するしかない。