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東村アキコ「いつも同じタイプの顔を好きになる」 洗濯物を畳みながら思い出した相手が初恋の「こうちゃん」だった

東村アキコさんインタビュー #1

2021/03/02

source : ライフスタイル出版

genre : エンタメ, 読書, ライフスタイル

note

同じタイプの顔を好きになる理由を考えて思い出した

――初恋を思い出したのは、大人になってから再会するなど、何かドラマチックなできごとが?

東村 いや、そんなのはまったくないです、残念ながら(笑)。

 私はK-POPがすごく好きで、なかでも「2PM」というアイドルグループのファン・チャンソンが好きなんです。よくK-POP仲間と、誰がかっこいいとか、あの子いいよね、みたいな話をしているんですけど、ある時「いつも同じタイプの顔を好きになるけど、なんでこの系統の顔が好きなの?」と聞かれたんですよ。

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 自分で意識したこともなかったので、そういえばなんでだろうと、そこで初めて考えてみたんですけど、わからなくて。

 それが、家で洗濯物を畳んでいる時ふと「そういえばチャンソンって、初恋のこうちゃんに似ているかも」と、突然思い出したんです。それが40歳の時でした。

心のどこかにいつも「こうちゃん」がいたのかも

 

――『わたおぼ』に登場する「こうちゃん」が、その初恋の「こうちゃん」なんですか?

東村 そうなんです。近所に住んでいた3歳年下の男の子で、茶色い髪が光に透けるときらきら光って、天使みたいにかわいい子でした。よく一緒に遊んでいたんですけど引っ越してしまって、それきり会えなくなってしまったんです。

 言われてみると、私が好きになるK-POPアイドルはいつもその「こうちゃん」に似ている顔立ちだったので、もしかしたら心のどこかにいつも「こうちゃん」がいたのかもしれませんね。自分ではまったくそんなふうに思ったことはありませんでしたが。

「隠れショタコン」みたいな感じで、必死に気持ちを隠していた

――設定までそのままなんですね。それまで思い出さなかったというのは、逆に何か苦い思い出でもあったのでしょうか。

東村 私は宮崎の田舎出身で、しかも30年も昔の話ですから、最上級生の6年生の女子が3年生の男子を好きになるなんて、絶対にあってはいけない話だったんです。しかも私には2歳下の弟がいるんですけど、その弟より年下が好きだなんてばれたら、一生後ろ指さされます。そういう時代と土地柄だったので、今にして思えば「隠れショタコン」みたいな感じで、必死に好きという気持ちを隠していたんだろうと思います。

 近所なのでよく一緒に遊んでいたし、ウチにもよく遊びに来ていたんですよね。ものすごい好きだったのになあと、今になって思います。