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「私には何もない」なんて絶対ない “普通の女性”に〈擬態〉するダルちゃんを通して伝えたかったこと

2020/08/10

source : 週刊文春WOMAN 2019GW号

genre : エンタメ, 読書, ライフスタイル, 社会

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 後世に読み継ぎたい傑作を紹介する「週刊文春WOMAN」連載「現代の古典」第2回に登場するのは、「ウェブ花椿」での連載中から大きな反響を呼んだ漫画『ダルちゃん』。作者のはるな檸檬さんに話を聞いた。

 主人公のダルちゃんは、ダルダル星人の素性を隠し、24歳の派遣社員・マルヤマナルミに〈擬態〉している。本書は、普通の女性のふりをしていたダルちゃんが、自身の生きづらさの正体を知り、詩と出合い、本当の自分や幸福を見つけていくまでの物語だ。

ダルちゃん 1・2』(はるな檸檬・作 小学館各850円+税)

「資生堂の担当さんから、『花椿』では詩を公募していることや、普通の主婦やOLさんがとても熱心に応募してくださるという話をうかがいました。『詩を書くのは、社会で見せている自分じゃないものを表現したい気持ちの表れなんだろうなぁ』と思ったので、連載に当たっては、詩を書く女の子の話にしようと、物語のアウトラインだけ考えてスタートしました」

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 作者のはるな檸檬さん曰く、擬態は誰でもすること。

「言ってみれば、そのコミュニティーの中で求められている、役割やキャラクター。『あなたはこういう人でしょ』という空気やノリに合わせるのは、生きる上でのちょっとした技術で、男女関係なくやっていると思います。ただ、やり過ぎると自分も混乱する。

 実は私も10代のころは擬態がめちゃめちゃ得意。ギャルっぽい子からヲタクな子までクラスのどんなグループとも普通にしゃべれたし、擬態しすぎて、ダルちゃん同様、本当の自分や本心がどこにあるのかわからなくなっていたかも」