『私の家政夫ナギサさん』(TBS系 毎週火曜よる10時~)がはじまったとき、『逃げ恥』(『逃げるは恥だが役に立つ』)との類似性を感じるという声がSNSで散見された。働いている独身者が「ハウスキーパー」を雇うという合理的な選択が同じだったのだ。
『逃げ恥』では主人公みくり(新垣結衣)が派遣の仕事をクビになり、家政婦として働くことになり、一方の『ナギサさん』は主人公メイ(多部未華子)が家政夫(大森南朋)を雇って快適な私生活を獲得する。
日テレの“あのドラマ”から切り開いてきた“女性の歴史”
働く女性にとって大森南朋演じる家政夫ナギサさんは、まさにこういう人を求めていた! という存在。掃除、料理、洗濯……家事は完璧なうえ、仕事で凹んだときに「あなたはがんばっている」と認めて褒めてくれる。求めに応じて朝まで手を握っていてくれ、朝起きて、帰って! と言えばそそくさといなくなってくれる。
雇用関係だからこそ、支払ったギャラの分、契約した分のことをやってもらえる。これが、感情で結びついた恋人や夫や妻が気ままに「来て」「
『逃げ恥』の場合、徐々にみくりと雇用主・平匡(星野源)の関係が変わって、恋愛関係になり、ふたりが対等になってくると、平匡に“なあなあな部分”が出てくる。みくりはそれを「好きの搾取」であると毅然と改善を要求する。
日常生活をあくまで“労働”とみなし、各々の義務を決めることで気楽さを手に入れたい。現実では、規則に則った労働にもかかわらず、サービス残業や派遣が雑用をやらされることなど理不尽なことがあるから余計にそう思う。こうした労働と報酬の関係をドライに描き出したドラマがある。『ハケンの品格』(日本テレビ系)だ。
13年前の2007年、女性や派遣社員が、男性、正社員に奉仕するもののように勘違いされていた状態を『ハケンの品格』が打破し、2016年、『逃げ恥』で契約結婚によって女性の立場を明確にし、2020年『ナギサさん』でついに女性は男性を家政夫として雇っていいのだという境地に立ったのである。これぞ女の前進の歴史。