「永尾くんと三上くんの間に挟まれて、優柔不断な態度をとってしまう関口さとみという役は本当の私と違いすぎて、あまり好きなタイプの女性ではなかったですね(笑)。私は『悩むと時間がもったいない』って思って、前に進みたい性格なので。でも、やりがいのある面白い役でした」

 そう当時を振り返るのは、1991年に放送されたドラマ「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)で、関口さとみ役を演じた女優の有森也実(52)だ。

有森也実さん ©文藝春秋

 放送日だった月曜の夜には若い女性が街から消えると言われ、最高視聴率32.3%を記録。小田和正が歌った主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」も258万枚を売り上げる大ヒットとなるなど、社会現象となった「月9」を代表する恋愛ドラマだ。

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(全2回の1回目。#2を読む)

リメイクの「令和版」も話題に

 物語の中心は4人。自由奔放な性格の赤名リカ(鈴木保奈美)、真っ直ぐだが過去を引きずりがちな“カンチ”こと永尾完治(織田裕二)、遊び人でモテ男の三上健一(江口洋介)、そして、男性の後を3歩下がって歩く古風な関口さとみだ。物語は愛媛の田舎から上京してきた高校の同級生たちが、大都会・東京で揉まれながら社会人として成長していく姿が描かれている。

ドラマ「東京ラブストーリー」制作発表。左から江口洋介、有森也実、鈴木保奈美、織田裕二、千堂あきほ(1990年11月) ©産経新聞社

 放送から29年――。その名作が今年、動画配信サイト(FOD、Amazon Prime Video)でリメイクされて、話題となっている。令和版ではリカ役を石橋静河、“カンチ”役を伊藤健太郎、三上役を清原翔、有森が演じた関口さとみは、E-girlsの石井杏奈が演じている。令和版「東京ラブストーリー」は、時代設定こそ変更されているが、リカの「カンチ、セックスしよ!」との衝撃的なセリフなどは引き継がれている。

 有森はこの新作にも目を通したという。

「前作は、地方出身の3人(永尾、三上、関口)に素朴な感じが漂っていましたけど、令和版はみんな洗練されてナチュラルですね。作品も時代の雰囲気を反映してサラッとしていて、いまの若い子たちも楽しめるように作られていると思います。

2020年版の「東京ラブストーリー」(フジテレビホームページより)

 リメイク版を見ていて感じたのは、コミュニケーションツールの違いです。私たちは、公衆電話、ポケベルの時代ですから、切なさの表現が今とは少し違うかな。帰宅して家の留守番電話聞いて初めて事態がわかるようなシーンが多いし、恋愛している男女のすれ違いによって感情が上書きされている時代でした。それが今は直接会わなくてもLINEやメール、携帯電話と、いろんなツールがある。今ならリカが海外に転勤しようが、SNSで探そうと思えばすぐに繋がれちゃうわけだし(笑)」