「死んでしまえ」カミソリ入りの手紙も
今でこそ、俳優としてビッグネームになった織田裕二、鈴木保奈美、江口洋介、そして有森也実の4人だが、91年当時は23歳だった有森をはじめ、みな20代の若手俳優だった。
「保奈美さんは知的な大人っぽい人。織田さんはとても真面目で、『この役、難しいよね』『読み合わせしようよ』と言い合って、2人で時間をみつけてはセット脇でセリフ合わせを何度もしました。江口さんは人懐っこくて、いつも現場の雰囲気を明るくしてくれる可愛らしい方でした」
放送がスタートし、ドラマの人気が高まるにつれて、視聴者の中に現れたのが“アンチさとみ”だった。というのも、優柔不断なさとみは、自分を想うカンチの気持ちを知りながら三上と関係を持ち、最終的にはリカからカンチを奪う“魔性の女”。そのイメージが視聴者に定着したからだ。
「あの頃は、男女雇用機会均等法ができて、女性がバリバリ働くことが社会に浸透していった時期。だから、原作の柴門ふみさんの漫画では古風なさとみを主体として描かれていたものを、時代に合わせてドラマはキャリアウーマンのリカ目線で作られた。さとみよりもリカの描かれ方のほうがサバサバしていて、カッコイイなっていう憧れは、私にもずっとありました(笑)。だから、リカを応援したくなる人の気持ちも分かるんです」
ドラマ終盤には、リカのところへ向かおうとするカンチの元に、さとみがお手製の「おでん」を持って現れ、「行かないで」と涙目で引き留める名シーンがある。結果さとみはカンチの略奪に成功。さとみは、世の女性からは“おでん女”と呼ばれて恨まれることになる。
「あのシーンの『いかないで』っていう気持ちは、さすがに私も腑に落ちているんです。だって欲しいものは欲しいですからね。(リカの元へ)行かせたくない気持ちは分かります。
放送当時、いろいろな反響がありました。カンチのファンがリカとの恋を邪魔したことに怒って、事務所には『死んでしまえ』と書かれた手紙や、カミソリ入りの手紙が届きました。そういえば、あの頃、プライベートで新宿駅近くの地下通路を歩いていたら、石が飛んできたんですよ。『地下なのにどうして石が飛んでくるんだろう』って、最初思ったのを覚えています。誰が投げたのかもわからず仕舞いでしたが、さすがに身の危険を感じました。
今でも、ドラマが再放送されると『やっぱり有森也実嫌い』『関口さとみムカつく!』って、ネットがザワつくんですよね(笑)。29年も経っていても、当時の感覚にタイムスリップできるって、すごいドラマですね」