「神主だった父は反対していましたけど、華やかなことが好きな人だった母は、私の芸能活動を応援してくれました。『学生だし、ダメだったら辞めればいいじゃない』みたいなすごい軽いノリでこの仕事を始めたんです」
そうデビュー当時を振り返るのは芸能生活37年目を迎える女優の有森也実(52)。実はデビュー当初は女優ではなく、雑誌モデルとして活動していた。
(全2回の2回目。#1を読む)
「背も高くないから女優をやらせよう」
「10代少女向けの『mc Sister』(婦人画報社、現ハースト婦人画報社)というファッション雑誌に、中学3年生のときにモデル募集というのを見て応募したんです。そうしたら受かっちゃって……。モデルになりたいというよりは、大好きだった雑誌の編集部に行ってみたいっていうのが動機でした。1年間、『mc Sister』の専属モデルをやって、芸能事務所のスペースクラフトに入りました。事務所の社長からは『有森は背も高いわけでもないし、スタイルがいいわけでもないので女優をやらせよう』と。今の女優の道を開いてくれたのが社長でした」
中学を卒業後は、高校に通いながらオーディションを受けて、テレビドラマに出演する日々。18歳の時に渥美清主演・山田洋次監督の映画「キネマの天地」(1986年)でヒロイン役に抜擢され、ヴェネツィア映画祭にも出席。第29回ブルーリボン賞新人賞、第10回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。
そしてその5年後、前編で詳しく紹介した、有森の人生を大きく変える「東京ラブストーリーの」“関口さとみ役”と出会う。
「『関口さとみ』という役を演じたことは私の女優人生で大きなことで、それまでの古風な私のイメージをガラリと変えてくれました。その後も婦人警官、愛人、殺人犯までいろいろ演じましたが、どんな役をやったとしてもやっぱり、さとみ役のイメージを越えられるものはなくて。あるときまでは“関口さとみに対する挑戦”みたいな気持ちで女優をやっていたと思います」