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「“暴力団”はいいけど“反社”とは呼ばれたくない」ヤクザとして生きる男たちの“不思議な本心”とは

『教養としてのヤクザ』より #2

note

鈴木 「反社」と呼ばれるくらいなら、「暴力団」のほうがマシってことですかね。あとヤクザが面白いのが、「表現の自由」(憲法第21条)という建前を認めてくれる。「結社の自由」と並んで表記されているからですかね。「こんなことを書くな」と文句言ってきたときに、「僕らには表現の自由があります」って言うと、「おっ!」となって、武闘派と呼ばれる組織ほど大目に見てくれます。「そんなもん、関係あるか!」って怒鳴るほうが暴力団っぽいのに、意外にそうはならない。

溝口 法的に曖昧な存在だからこそ、それに対する意識が高いんでしょうね。

朝日新聞を取る護憲派も一定数いる

鈴木 意識高い系ですね。ところで、ヤクザにも改憲派と護憲派がいるって、ご存じですか?

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溝口 私は面と向かって聞いたことはないな。

鈴木 厳密に改憲派、護憲派に分けられるかはわからないんですが、組の事務所は必ず新聞を取っていますよね。私、こういうこと調べるのが大好きで(笑)、全国紙でざっくり分類するなら、朝日新聞派と読売新聞派に二分される。朝日は護憲派で読売は改憲派でしょうから、数で言えば愛国や保守を叫ぶヤクザのほうが圧倒的に多いですが、護憲派のヤクザも一定数いるということ。

溝口 共産党と親和性が高いからかもしれない。共産党に対して一目置いているヤクザはけっこう多いから。距離は置いているが、敬意は払うという。

鈴木 そうですよね、昔から。なんでですかね。

溝口 古くは、刑務所の中での触れ合いがあったと聞いている。戦前に治安維持法で逮捕された共産党幹部と刑務所で一緒になって交流を持ったらしい。

鈴木 暴力的な取り調べにも音を上げなかった根性を認めているんでしょうね。

溝口 やっぱり刑務所のなかに入れば人間性が問われるから、彼らも一目置かざるを得なかったと。

鈴木 刑務所入ったら、何をカッコつけてもダメですからね。

◆◆◆

※著者の溝口氏、鈴木氏両名によるシリーズ最新作『職業としてのヤクザ』(小学館新書)も現在好評発売中です。

【前編を読む】高級クラブは50万、ゲームセンターは毎月100万?! ヤクザと「みかじめ料」の知られざるリアル

教養としてのヤクザ(小学館新書)

溝口敦 ,鈴木智彦

小学館

2019年10月8日 発売

「“暴力団”はいいけど“反社”とは呼ばれたくない」ヤクザとして生きる男たちの“不思議な本心”とは

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