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殺人、詐欺から下着泥棒まで……話題の書『日本プロ野球犯罪事典』はなぜ、どのように作られたのか

殺人、詐欺から下着泥棒まで……話題の書『日本プロ野球犯罪事典』はなぜ、どのように作られたのか

2021/04/25
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「ただし韓国系選手の事件については、我々に韓国語の読解能力がなく日英記事と機械翻訳に頼ったため、調査や記述が甘いと感じています。また調査にあたっては文献的アプローチに徹したため、関係者に取材すれば容易に掘り下げられたであろう事件でも、情報不足のまま掲載を見送ったものがあります。そうした不備についてはどなたかが後に続いて調査を補完していただければ、我々としてもうれしい限りです」

“負の歴史”を体系化して残すことの意義

 筆者は横浜大洋ホエールズ時代からのベイスターズファンである。子供の頃はプロ野球選手に純粋に憧れ、聖人君子だと勝手に思い込んでいた。が、彼らの中にも罪を犯す者が存在することを新聞やニュースで否応なく知らされた。複数の選手が街中で若者とトラブルになり、殴って傷害で逮捕された事件。不動のレギュラーが開幕からしばらく出場停止になった脱税事件。ある選手が衝撃的な事件で逮捕、解雇されたことは今なお心の中に小さな棘のように残り、消えることはない痛恨事である。『犯罪事典』は当然それらの事件にもページが割かれており、読むのに気が重い。

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 しかし、そうした負の側面もチームの歴史である。忌々しい事件があり選手が処分や社会的制裁を受けてきたことで今のベイスターズ、ひいては日本プロ野球界がある。それは確固たる事実だ。本書の巻末には、世間を大きく揺るがしたプロ野球脱税事件と黒い霧事件について別枠で詳しく記されているが、2つの事件が球界に残した教訓は特段大きく、似たような犯罪を抑止するひとつのストッパーになっている。過去を見て見ぬふりはできないし、人間は過去から学ぶ生き物であることを改めてこの『犯罪事典』は教えてくれる。浦田さんたちが事実関係を丹念に拾い集め、体系化したことの意義は大きい。

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「我々としても、現在現役で活躍している選手の起こした事件や交通違反など、心情的には収録したくなかった選手や事件があったことは事実です。しかし繰り返しになりますが、この本で個々の野球選手を道義的に糾弾する意図はありません。今後もし同じような野球選手の事件が起きた時に類似事案を確認したり、選手の伝記を書く際の参考など、皆さんに資料として広く活用していただくことを望んでいます」

「日本プロ野球犯罪辞典」の一編を読む

日本プロ野球犯罪事典 球界刑事事件史

浦田盛一 ,吉田亮太

ちんぷー

2021年3月11日 発売

殺人、詐欺から下着泥棒まで……話題の書『日本プロ野球犯罪事典』はなぜ、どのように作られたのか

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