近ごろ、野球好きの間で静かに話題になっている『日本プロ野球犯罪事典 球界刑事事件史』。日本プロ野球に所属した選手が起こした刑事事件のすべてが書かれた異色の書。この中から1本を紹介する。1988年、ヤクルトに在籍した三塁手・ダグ・デシンセイがインサイダー取引で告発された際の記録だ(編者インタビューはこちら)。

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ダグラス(ダグ)・バーノン・デシンセイ 

インサイダー取引(アメリカ) 


 1950年8月29日生。1970年ドラフト3巡目でオリオールズと契約。1976年三塁のレギュラーとなる。1982年にエンゼルスに移籍しシルバースラッガーを受賞した。1987年9月に解雇されカージナルスに移籍。1988年ヤクルトに入団、東京ドームにおける公式戦第1号本塁打を放つ。同年限りで現役を引退。


【MLB 通算】 

1649試合1505安打312二塁打29三塁打237本塁打879打点778得点58盗塁22犠打64 犠飛618四球21死球904三振176併殺打 打率.259出塁率.329長打率.445 

【NPB 通算】 

84試合71安打13二塁打0三塁打19本塁打44打点39得点1盗塁0犠打3犠飛32四球0死 球13併殺打 打率.244出塁率.316長打率.485 

元ヤクルト選手が約2億円のインサイダー取引で逮捕された経緯

 2011年8月4日、引退後、実業家となっていたデシンセイと3人の仲間(理学療法士のジョセフ・J・ドナヒュー、不動産専門の弁護士フレッド・スコット・ジャクソンと実業家のロジャー・A・ウィッテンバッハ)はアメリカ証券取引委員会(SEC)に170万ドルに及ぶ違法な取引の疑いで、インサイダー取引の容疑で告発され、疑惑の認否は保留したまま250万ドルの罰金(これはデシンセイだけの分で、ドナヒューは11万3,000ドル、ジャクソンは29万3,000ドル、ウィッテンバッハは42万2,000ドル)を支払う見通しだと報じられた。 

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デシンセイ選手

 デシンセイは2009年、医療機器会社、アボット・ラボラトリーズ(AbbottLaboratories)が「Advanced Medical Optics」社(以後通称のAMO社で表記する)を買収する情報をAMO社の社長、ジェームズ・マッツォから入手した。二人はカリフォルニアのラグナ・ビーチにおける近在人であったという。そして事前にAMO社の株を83,700株を購入し、買収の発表前後で株価が143%高騰したのを見受け、2009年1月12日に売却して120万ドルに及ぶ違法な利益を得たとされる。