このAMO社株式購入のためにデシンセイは事前に110種の保有株式を一旦手放し、その資金をつぎ込んでいたとされる※1。
デシンセイたちは11月28日に起訴されたが、SECによれば彼はこの他にも殿堂入りプレイヤーのエディー・マレーと、デービッド・ジーン・パーカーにも情報を提供し、その結果マレーは358,151ドルの罰金を8月に払うことになったという(ただし、彼は起訴されていない)※2。
最大220年相当の刑期が1日に
2017年5月12日、デシンセイは14の項目に付き有罪判決を受けた※3。最大で220年の刑期を宣告される可能性のある内容であったが、彼らに情報を不正に提供したとされるマッツォの裁判が長引いており、その審理における情報提供等の司法取引によりデシンセイの刑期が増減する可能性があるため、長期間に渡り刑が確定しないままとなっていた。
マッツォは法廷における告発を否認しており、彼の裁判におけるデシンセイの「新しい物語」は虚偽であると主張していたが※4、2018年12月、150万ドルの和解金を支払うこと等と引き換えにSECが刑事告発を取り下げる内容の和解が成立し、マッツォの刑事訴訟は終了した。これをうけて、宙に浮いていた形のデシンセイの判決も確定することとなった※5。
2019年8月12日、サンタアナの連邦法廷は、デシンセイに1日の懲役および8ヵ月の自宅拘禁と2年間の保護観察、1万ドルの罰金を宣告した。
当初は終身刑に近い長期刑も予想されたデシンセイの判決がこのようにほぼ無罪放免に近いところまで減じられたのは、検察の主たる狙いであったマッツオに対する告発が和解金の支払いによる刑事告発の取り下げという形で終結してしまったため、事件においては二次的な存在であったデシンセイの刑も均衡を考慮して大幅に減じられたものと推察される。
法廷でデシンセイは「あの瞬間の私の行為が誤っていたことを私はよく知っており」幾度も自らを責めたと述べた。
野球殿堂入り選手のロッド・カルーが、デシンセイが奉仕活動に従事していたことを陳述し、彼について「他者のために多くのことを成した」人であり、「真の友人であると呼ぶことに喜びを感じる」と述べた時、デシンセイは涙を拭った。
アンドリュー・ギルフォード判事はデシンセイに対し「あなたは間違いを犯した善人である」と延べ、「間違いを過去のものとして欲しい」と説諭した※6 。
※1:Wall Street Journal ”Ex-Baseball Player DeCinces, Others Charged in Insider Case”2011.8.4 Los Angeles Times“Ex-Angel player settles SEC suit; Doug DeCinces will pay $2.5 million but doesn’t admit to or deny insider trading.”2011.8.5
※2:Wall Street Journal ”Ex-baseball Player DeCinces Indicted in Insider Case”2012.11.29
※3:産経新聞、共同通信 2017年5月13日
※4:Orange County Register“Ex-Angel star Doug DeCinces expected to testify against one-time co- defendant in insider-trader case”2018.1.10
※5:Orange County Register“SEC settlement ends criminal case against CEO accused of providing insider-trading information to ex-Angels star Doug DeCinces”2018.12.6
※6:Bloomberg ”Ex-Orioles Player Doug DeCinces Gets Time Served for Insider Trading”2019.8.13
(2020年12月7日閲覧)