「レジェンド!」。レオネス・マーティン外野手は敬意を評して、そう呼ぶ。松中信彦臨時打撃コーチの事だ。今年の春季キャンプから臨時打撃コーチとして招いた松中氏の存在にマーティンは興味津々だった。元々、好奇心旺盛。平成唯一の三冠王にして現在において日本で最後の三冠王(04年:打率.358、44本塁打、120打点)。通算1780試合に出場して352本塁打、1168打点。伝説の数々を耳にするとマーティンは「おお、レジェンド!」と甲高い声を上げ、目を輝かせながら近寄った。あとは身振り手振り、通訳も介しながら同じ左打者として野球理論をぶつけ合った。それ以降、打撃練習のたびにアドバイスをもらう関係性が続いている。

マーティン選手と松中臨時コーチ ©千葉ロッテマリーンズ

成功する外国人選手に共通する特徴とは

「タイミングの話であったり、ゲームの中における配球であったり、色々と聞かれるね。同じ左打者でもあるので、自分の成功談を話したり、タイミング等で気が付いたことがあれば伝えるようにしている。打撃練習では『今、タイミングはとれているか? チェックして欲しい』とか言われて、見たりしているよ」と松中臨時打撃コーチ。

 元々、ホークスでの現役時代から外国人選手との会話、交流を積極的に行っていたという同コーチ。こと日本の配球に関するアドバイスは聞かれれば、口酸っぱく伝えてきた。

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「いくらストレートを待っていてもこないものはこない。そういう時は思い切って変化球を狙ってみる。それが日本。こうではないと打てないではなくて、日本独特の環境に合わせていくしかない。色々な外国人選手を見てきたけどやっぱり成功するのはしっかりと研究をして配球の傾向なども考えて、自分の考え方を柔軟に環境に合わせながらプレーができる選手。そういう意味ではボクが現役時代に大事にしていたような打席での目付けとかもね」(松中臨時打撃コーチ)

 ホークス時代のチームメートとして特に思い出されるのはフリオ・ズレータ内野手(のちにマリーンズでもプレー)、ペドロ・バルデス外野手。2人に共通しているのは研究熱心だったこと。「いつも打撃を終えてベンチに戻ると、メモをつけていたのが印象的だった。なにを書いているのかなあと聞くとノートに投手の特徴とか打席での反省点、気づいたことなどを書いていた。それがとても印象的だった」と松中コーチ。貪欲に新しい考えを受け入れ、学ぼうとするマーティンの姿勢。それは同コーチが見てきた成功する外国人選手に共通する特徴である。