文春オンライン

「LGBTQを一種のムーブメントとして描くのは、私の漫画は違うかなと」 人間の“グラデーション”をおかざき真里が感じた、小学3年カナダでの“経験”

おかざき真里さんインタビュー#2

2021/07/30
note

 接待なんかもそうだと思いますが、値踏みされるというか、ジャッジを受ける立場で食べるのはしんどくて、ジャッジしない人と一緒に食べるご飯が楽しいです。それと、明日も明後日も普通に会える相手と一緒に食べるのも大事です。

©iStock.com

──それはなぜですか?

 おかざき 毎日あたりまえに会える相手だと、いまある話をつっこまないというか、うまくスルーしてくれる部分があるじゃないですか。アドバイスよりスルーがありがたいと言うか。たまにしか会わない相手だと、打ち明け合ったり解決方法を示したくなりますが、そういうことは、「ご飯を食べる」ときには、それほど重要じゃない気がするんですよね。

ADVERTISEMENT

──3人が「こういうことがあった」と打ち明けたときに、誰かが解決策を打ち出すでもなく、ただひたすら「おいしい」と言って終わります。

おかざき それが生活だからです。ご飯を食べることって毎日の生活ですよね。相手の悩みに対して「それはこうだ」とジャッジするのではなく、むしろ「ほうほう」と聞いて否定もせず、「それよりこれ、おいしいね」と言う。毎日のことだとこれくらいが、いいあんばいなんじゃないかと思います。

最終回はふんわりとは考えている

──「食べる」という日常を通して、幸福な時間を教えてくれる『かしましめし』ですが、時々先の展開を匂わせるモノローグが出てきて気になります。この先の展開や最終回はすでに考えているのですか。

おかざき ふんわりとは考えています。でも、作者的にはゴールイメージじゃないところに着地するのが面白いので、描いている途中で新しい発見をしたら、そっちに舵を切るかもしれません。いつも連載を描くときに「この人が出てくると話をまとめてくれる」という頼りになるキャラクターがいて、今回はそれが蓮井先生なので、今後蓮井先生が出てくるときは物語が動くかも……。と、自分で言っておきながら、『阿・吽』(小学館)のときみたいに、横から「これどうですか」と言われて「面白そうっすね」と描いてしまうかもしれませんが(笑)。

 もうあと何作描けるかわかりませんが、まだ描きたいテーマもあるので、次作の体力は残しつつ、「オイシイ、タノシイ、オモロイ」を描いていけたらと思っています。

(取材・構成:相澤洋美)

かしましめし 1 (Feelコミックス)

おかざき真里

祥伝社

2017年9月8日 発売

「LGBTQを一種のムーブメントとして描くのは、私の漫画は違うかなと」 人間の“グラデーション”をおかざき真里が感じた、小学3年カナダでの“経験”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー