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もはやダンジョン? 地方出身者を悩ます迷宮駅「新宿」が誕生した歴史背景とは

迷宮駅を探索する #1

2021/10/21

genre : ライフ, 社会, 歴史

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有効なリニューアルが行われない東口

 構造を紐解いていくと、各線の改札内と連絡通路だけなら、新宿駅の迷宮度は限定的だ。

 きっちりした碁盤目状とはいえないまでも、東西南北の方向性は概ね整っている。厄介なのは、駅の周辺部分だ。

 新宿通り沿いのいわゆる「アルタ前」からルミネエスト東側に続く新宿東口駅前広場は、日本屈指の好立地にありながら、有効活用されているとはいいがたい。地下駐車場へのスロープや植栽スペースがあって、狭いスペースが分断されている。ルミネエスト北側の「アルタ前」広場は、車道の一部が撤去されたことで商業施設への搬入出車や地下駐車場へアクセスする車両の動線が変わり、ようやく歩行者が足止めを食らうことはなくなったが、ルミネエスト東側のエリアは利用しにくいままだ。

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 2020年7月にリニューアルされてアートスペースとなったものの、手狭なのは相変わらずで、両サイドの道路にも変化はない。新しいパブリック・アートは「花束を持っている少年」がモチーフらしいのだが、見ただけでは何かわからないし、キャッチーな名前もない。「新宿東口のなんかデカいアレ」で待ち合わせするくらいなら、わかりやすい「アルタ前」「交番前」を選ぶだろう。

アルタ前 ©iStock.com

 駅前広場の主目的は「待ち合わせ」であり、副目的は「休憩」だ。広くて平らなスペースと、「ハチ公」や「ナナちゃん人形」のような待ち合わせしやすいアイコンがあって、できればテイクアウトしたドリンクなどを飲める簡易的なベンチがあるとありがたい。グランフロント前に広大な空間が生まれた大阪駅や、JRタワー前に広場のある札幌駅、博多口が開放的になった博多駅に比べると、新宿駅の東口はどうにも貧弱で、効果の薄いリニューアルばかり繰り返されている。

 東口周辺の地下にも、迷宮が広がる。新宿通りの地下を通る丸ノ内線に沿って、「メトロプロムナード」が新宿三丁目駅まで続いていく。都営新宿線、さらに副都心線の開通に伴って地下道も延伸し、東は新宿二丁目、北は花園神社周辺、南はタカシマヤタイムズスクエアまでつながったが、基本的に大通りの下を通っており、迷ったら地上に出ればいいだけなので、難易度は低い。

 厄介なのが、西武新宿線へ向かう地下通路だ。新宿駅東口から、いったん新宿三丁目方向へ向かい、地下街の新宿サブナードを経由する「コ」の字型となっている。もちろん、地上を通ればショートカットできるのだが、雨や雪の時に濡れずに行くためには、遠回りが必要となる。ただ、これは近い将来に解消されそうだ。西武鉄道が地下通路を新宿通り直下に整備する計画を、既に発表している。地下のみで移動した場合、従来約11分かかっていたところが約5分に短縮される見込みだ。

迷宮駅を探索する (星海社新書)

渡瀬 基樹

星海社

2021年9月24日 発売

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