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「最初からできないって決めつけるな」今でも思い出す西武・辻発彦さんの鬼の形相

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/08
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指揮官の激務と、人としての優しさ

 辻さんにかけられた言葉は、プロの厳しい世界で17年間プレーする上で支えになった。

 1年目のシーズン中、試合で使ってもらっているのにプロのレベルに困惑し、何打席もヒットが打てずに落ち込んで泣きそうになっている僕に対し、辻さんはこんな言葉をかけてくれた。

「ヒットは出ていないけど、高卒1年目でバットに当たるだけで大したもんだよ!」

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 悩んでいる選手がいたら、これ以上落ち込まないように声をかける。そんな優しさを持っている方だった。

 選手とコーチという関係で、2年間という短い時間だったけど、辻監督から学んだことはその後の野球人生に大きく役立った。

 本当に感謝しています。ありがとうございました。

 2017年に埼玉西武ライオンズの監督として就任し、Bクラスだったチームを1年目から立て直したのが辻監督だ。指揮官という責任ある立場で毎日野球と向き合うことは、僕たちが想像している以上に大変な仕事だと思う。

ライト後方から夢見る歓喜の輪

 今年のライオンズは開幕直後から山川穂高、栗山巧、外崎修汰など主力選手に故障が相次いだ。僕自身も新人王候補と期待していた若林楽人は5月30日に行われた阪神戦で守備の際、負傷して戦線離脱となった。チームとしてはもちろん、辻監督としてもかなり苦しい状況が続いたはずだ。

 そうしてライオンズにとって難しい1年となってしまったが、来季も辻監督の続投が決まった。指揮官として6年目、今からライオンズの試合が楽しみだ!

 選手たちの特徴を理解し、時に厳しく、時に優しく、持ち前のバランス感覚で個々の才能を最大限に引き出し、強いチームを作り直して、王者に返り咲いてほしい。

 辻監督の息子さんのヤスシさんにも、今年からメットライフドームにオープンしたお店「BACKYARD BUTCHERS」に何度も来店していただいた。いつもありがとうございます。ヤスシさんと僕は同じ誕生日で、ご縁を感じています(笑)。

 最後に来季について、僕の個人的なイメージを描かせてほしい。本拠地メットライフドームで3年ぶりの優勝を決め、あのニコニコ笑顔の辻監督が胴上げされている。その様子を、僕もライトスタンド後方からニコニコ笑顔で見ている――。

 ライオンズファンの皆様、今季の悔しい気持ちを来季に思い切りぶつけましょう!

◆ ◆ ◆

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