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「譲りたくないという気持ちで熱中して書いたのは久しぶり」ジェーン・スーの“表情が変わった”推しと過ごした1年

「譲りたくないという気持ちで熱中して書いたのは久しぶり」ジェーン・スーの“表情が変わった”推しと過ごした1年

ジェーン・スーさんインタビュー#2

2022/01/21

source : ライフスタイル出版

genre : エンタメ, ライフスタイル, 読書

note

心のバランスを保つには

――それにしても、推しについて話してるスーさんの表情、すごく柔らかいですね。

スー そうなんです! 自分でも表情が変わっているのがわかります。昨年の1年、これがなかったらどうなってたんだろう、とすら思います。いろんな解像度が一気にバーっと上がりました。推しに対しては、ありがとう、ありがとう!という感じです。

――心のバランスを保つには、何かを愛でる気持ちも大事なのでしょうか。

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スー 人によると思います。興味ない人は全然興味ないでしょうからね。私もそうだったんですよ。興味もないし、わからないし、ついていけないなと思っていたのに、気づいたら自分がこうなっていました。だから「推しがいると心のバランスが取れます(私はね)」って感じ。私は楽しんでます、というだけです。

 

――「おわりに」には、「次の10年は、人生の新たなバランス配分がテーマになると思われます」と書かれていました。

スー 子育てがやっとひと段落したという人もいれば、40代は割と暇だったから巻き返そうと思っている人もいますよね。私みたいな人ばっかりではないと思いながらも、なんとなく年齢的に前の10年とは違う10年にしたいなと思っている人は多い気がします。

誰にも奪われないものは何かを考える

――前編で50代をどう過ごすかについて考えているところだと話されていましたが、楽しみな気持ちのほうが強いですか?

スー 話していて思ったんですけど、私は何かを失うことに対する恐怖が少ないんだと思います。今まで自覚がなかったので、いつからこう思っていたのかは全然わからないんですけど、何かしらのシナプスがぶっ壊れてるのかもしれないですね(笑)。

 

 さっきも言いましたけど、“大体はどうでもいい”と“人による”って思っていれば、生きていられる気はしますよ。チャレンジも、大体のことはどうでもいいって思っているとできますよね? だって、失敗しようがどうしようが、大体はどうでもいいことなんですから。

 この先、辛いことが起こったらどうしようって考えたとしても、自らその辛い何かを起こすわけではないかもしれないし、自分がずっと辛いことを起こさないで生きていけるかと言われたら難しい。自分でコントロールできないことを考えていてもしょうがないと思うようになったのかも。そんなことより、自分が持っているものや自分の中にあるものの中で、誰にも奪われないものは何かを考えるほうが、人生にとって有益だと私は思います。