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墾田永年私財法から、応仁の乱まで…日本社会に大きな影響を与えた「荘園制の歴史」

『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』(伊藤俊一 著)――ベストセラー解剖

2022/04/06
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『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』(伊藤俊一 著)中公新書

 奈良時代の墾田永年私財法発布から数えるとおよそ750年。平安時代後期に始まった中世荘園制の成立から数えても400年。荘園は長く存続し、日本社会に大きな影響を与えた。本書はそんな巨大なトピックの通史を描いた新書だ。気候変動研究の成果など最新の知見を活かし、テーマを現代的に刷新してもいる。

「予想していた以上にスケールの大きな内容で、日本の歴史のかなりの部分を荘園の時代が占めていたことを、改めて認識しました」(担当編集者の並木光晴さん)

 荘園は戦後、マルクス主義歴史学の影響で強い関心を持たれた時期もあった。だが、その波が去ると、英雄的な人物が不在のテーマであることもあり、比較的地味な扱いに。

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「すぐに売れなくとも、社会科の先生を中心に細く長く読まれるロングセラーになってほしい。教科書に絶対出てくる重要なテーマなのに、複雑で全体像をつかみにくいものを、どう子供にわかりやすく教えるか。真面目な先生ほど困るはずなので、そのような方の助けになれば……。そう考えて出した本が、発売直後から多くの方に手にとっていただけている。うれしくも驚いています」(並木さん)

 比較的若い歴史ファンが初速を支え、そこから中高年に読者の裾野が広がった。レーベルの培ったブランドと、日本中世史ブームもヒットを後押ししたか。

2021年9月発売。初版1万3000部。現在8刷5万8000部(電子含む)

荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで (中公新書 2662)

伊藤 俊一

中央公論新社

2021年9月17日 発売

墾田永年私財法から、応仁の乱まで…日本社会に大きな影響を与えた「荘園制の歴史」

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