『武士の起源を解きあかす 混血する古代、創発される中世』(桃崎有一郎 著)

 武士はいつ、どこで、どのように発生したのか。武士は800年以上に亘って日本史の主役であり続けてきたにもかかわらず、驚くべきことにその謎は未だ解かれていない。若き歴史家がその謎解きに果敢に挑んだ。

「武士の発生地を地方とするか都とするかで、武士の起源についての学説は2つに大別できます。例えば、地方の荘園の富裕な農民が自衛のために武士になったという説がありますが、まったく実証されていません。また、都の貴族が国司として赴任した先で土着化したり、国司が動員した武人の中から武士が生まれたという説もありますが、史料を読むと、ある時期までの国司は赴任先でたびたび襲撃されるような無力な存在です。国司であることが武士を生み出す足場になるとは考えられません。武士の起源を今でも探究しているのは、昨年『武士の日本史』を上梓された髙橋昌明さんぐらいで、その他の歴史学者は答えを出すのを諦めてしまったようです」

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 桃崎さんは本書で武士を(1)領主階級、(2)貴種、(3)弓馬の使い手と定義し、その発生の淵源を743年に朝廷が出した墾田永年私財法に求める。この法律により、土地を開墾すれば、自分のものにできることになったため、日本全土で激しい農地の奪い合いが始まった。その争奪戦で勝つには武力が必要だ。地方豪族は弓馬術を磨き、武力を高めていった。しかし、これだけでは武士は発生しない。著者は「王臣子孫」に注目した。