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マンションの隣人を刺し殺し、そして自らも…事故物件に住む30代女性が知った“驚くべき事実”

怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇――「共感」#2

2022/08/03

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, ライフスタイル, 娯楽

note

エレベーターの中で見てしまったもの

 さらに5分以上が過ぎても、何の動きもありません。私はもう一度非常用ボタンを押してこう言いました。

「すみません。どうなってるんですか。大丈夫なんですか」そういうと、インターフォンからこんな返事が来ました。

「リモートで再起動を試しているので、もう少しお待ちください。こちらに3人のお姿もモニターで確認できていますので、電気系統の問題はないので安心してください」と言って来たんです。それを聞いた友人は直ぐに大きな声で言いました。

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「すみません。私達は2人ですよ、どこのモニターを見てるんですか」

「〇〇マンションのエレベーターですよ。間違い無いです。一緒に居られる男性は今、端に体育座りをしながら上を向いておられますよね」

 私達2人は目を合わせて驚きました。

写真はイメージです ©iStock.com

「見えない男性が私達を見ている?」そう思った瞬間、室内灯が一瞬消えて再び点くと、エレベーターは動き出し、4階に停止しました。私達は急いで外に飛び出しました。

 そして、エレベーターから少し離れると、友人が泣きそうな声で言いました。

「私、見ちゃった」そう言ったんです。私も震えながら答えました。

「私にも見えた」

 エレベーターの室内灯が一瞬消えた時、端っこだけがボヤッと光っていて、見ると体育座りをしながらこちらを見ている男性と目が合ったんです。

住人が語った、驚くべき事実

 取り敢えず部屋に入ろうと廊下を進むと、私の部屋の前に男性が立っていたんです。どうしようと思っていると、その男性はゆっくり歩き始めました。そして、私の隣の部屋に扉も開けずに入っていくのが分かりました。

 このまま帰るのも怖いし、かといってまたエレベーターに乗るのも怖い。友人と2人でどうしようかと考えていると、そこに3つ隣の住人の方が、扉を開けてこちらに来てくれました。

「大丈夫? 見ちゃったの?」そう聞かれました。

「知らない男性が……」震える声でそういうと、自分の部屋に招き入れてくれました。

 そこで驚くべき話を聞かされました。

 私の借りている部屋は、数ヶ月前に殺人事件の現場となった部屋だそうです。その殺人事件の起こったきっかけは、隣同士の騒音だったのです。