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マンションの隣人を刺し殺し、そして自らも…事故物件に住む30代女性が知った“驚くべき事実”

怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇――「共感」#2

2022/08/03

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, ライフスタイル, 娯楽

note

相手を刺殺、そして自らも…

 最初に、私の部屋の隣の方がマージャンを夜遅くまでされるので、それを注意されました。すると逆ギレした男性が、嫌がらせの様に毎日、深夜にインターフォンを押すようになったそうです。

 そして、それに対抗するように、私の部屋の方が、音楽を大きな音で鳴らすようになられたそうです。

 その応酬が数日続いた後、私の部屋に住んでいた方が、もうこのような事はやめましょうと和解を持ち掛けられました。

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 そして部屋に招き入れ、話し合いをされたようです。しかし、ここでも喧嘩になって、私の部屋に住んでいた住人が相手を刃物で刺して殺し、直ぐに自らも命を絶ったという事でした。

写真はイメージです ©iStock.com

 私はこの日、友人の家に泊めてもらって、直ぐにマンションの解約をしました。

 深夜の麻雀牌を混ぜる音。イヤフォンから流れる謎の音楽。深夜のインターフォン。もしかすると2人は未だに喧嘩をされているのかも知れません。しかし、実はもう喧嘩はしたくないと思う心が、エレベーターのあの寂しげな男性の姿だったのではないかと考えています。

 それに、体験者が私だけなら、恐らく誰に言っても信用して貰えなかったと思います。私自身、悪い夢でも見ていたのだと、忘れようと努力していたに違いありません。しかし、友人も同じ体験を同時にしたということが、間違いのない事実である事を示しています。

 この経験から、人間は死んでしまったら無になるのではなく、魂は残るのだということを確信しました。