一昨年に続き、昨年もまた、新型コロナ抜きには語れない1年になってしまいました。一方で、コロナとは直接関係のない大事件も全国で数多く発生し、私たちを驚かせた年でもありました。今回はそんな令和3年(2021年)を、事故物件の観点から振り返っていこうと思います。(全2回の1回目/後編に続く

©iStock.com

アパートで亡くなった16歳少女

 昨年のニュースの中では、小田急線や京王線での刺傷事件や、年末に起きた大阪府大阪市でのビル放火事件、また神田沙也加さんの転落死などが、特に衝撃を受けたものとして記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

 しかし、事故物件という観点から振り返ると、電車はもちろん不動産ではなく、放火事件や転落死の現場となったクリニックやホテルもまた、居住用の賃貸物件でも売買物件でもありません。

ADVERTISEMENT

 そんな中、私にとって印象的だった事件や事故は、なぜか上半期に集中して起きていました。その一つが、和歌山県和歌山市のアパートで16歳の少女が心肺停止の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された6月の事件です。

 司法解剖の結果、少女の死因は外傷性ショックと判明。体にはいくつもの痣があり、虐待を受けていた可能性が浮上しました。少女は、両親と妹(4歳)と同居していたため、通常であれば、その後の取り調べなどですぐに真相に辿り着けたのかもしれません。

関西国際空港連絡橋 ©️iStock.com

 しかし、その2時間後――。関西国際空港へと繋がる連絡橋から、少女の母親と4歳の妹が海に飛び込みました。目撃者がすぐに110番通報したものの、警察が発見した時には、2人はすでに息を引き取っていました。4歳の娘を巻き込み、母親が無理心中を図ったものと見られています。

なぜ母親は無理心中したのか?

 一体、その一家に何が起きていたのか。この不可解すぎる事件は、思わぬ形で注目を集めることになりました。というのも、無理心中を図った母親は、和歌山毒物カレー事件で逮捕された林眞須美死刑囚の長女だったのです。

 平成10年(1998年)に起きた和歌山毒物カレー事件では、夏祭りで提供されたカレーライスに毒物が混入されており、67人がヒ素中毒に、そのうち4人の方が亡くなりました。この事件で逮捕された林眞須美死刑囚は今も冤罪だと主張しており、長女たちが亡くなったまさにその日、第2次再審請求を起こしたことが報じられていました。