昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

《相模原45人殺傷事件》「こいつしゃべれないじゃん」と入所者に刃物を 植松聖死刑囚の‟リア充”だった学生時代

2021/05/29

 2016年7月26日未明に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた大量殺傷事件。入所者19人を殺害、26人に重軽傷を負わせた植松聖(事件当時26)は、同施設に3年以上勤務した元職員だった。植松は犯行動機について「意思疎通のとれない障害者は安楽死させるべきだ」「重度・重複障害者を養うには莫大なお金と時間が奪われる」などの自説を展開し、世間に衝撃を与えた。

 著書「こんな夜更けにバナナかよ」など、「障害者との共生」をテーマに取材をつづけるノンフィクションライターの渡辺一史氏は、横浜拘置所に拘留されていた植松と14回にわたって面会。渡辺氏が「週刊文春」2020年4月2日号に寄稿した記事を再公開する(日付、年齢、肩書き等は掲載時のまま)。

(全4回中の4回目。#1,2,3を読む)

◆◆◆

 深夜、やまゆり園に侵入した植松は、職員を結束バンドで拘束した上で、入所者が「しゃべれるか、しゃべれないか」を職員を連れ回しながら確認した。

 植松の意図に気づいた職員が、「しゃべれます。みんなしゃべれます!」と泣き叫ぶのに対し、「お前めんどくさい! こいつしゃべれないじゃん」といって入所者に刃物を振り下ろしていった。また、職員の口をガムテープでふさぐ際に「苦しくなったら鼻で息を吸え」とアドバイスするなど、目的を果たすために理に適った行動を選択する植松の態度に、責任能力を疑う人はいなかっただろう。

事件当時の「やまゆり園」

 裁判全体を通して、植松には果たして責任能力があるのかないのか、聞く者の印象が二転三転するスリリングな展開となった。

無差別大量殺人犯によく見られる孤立感がまるでない植松

 そんな中、事実が解明されたことで、逆に謎が深まった問題もある。

 例えば、第6回公判(1月20日)以降、植松の幼なじみや学校時代の友人らの供述調書が、弁護人によって読み上げられていったが、植松がじつに多くの友人に恵まれていたことだ。

男女問わず友人が多い

「サト君(植松)には大学の学部関係なく、たくさんの男女の友人がいました」

 大学時代に所属したフットサルサークルの2学年後輩の女性はこう証言する。

「サト君は明るい性格で、サークル内でも人気者でした。新しく入ってきた後輩が、先輩たちの輪に入れないのを見たりすると、その手を引っ張って輪の中に入れようと努力している姿を見たことがあります」

 植松には、昨今の無差別大量殺人の犯人によく見られるような孤立感がまるでない。昨年の京都アニメーション放火殺人事件や、2008年の秋葉原通り魔事件に代表されるように、まともな職や人間関係に恵まれず、世間から孤立した人間が、いわば社会への復讐を試みるかのように起こした事件とは質的に異なる。植松は、その対極の「リア充(現実生活が充実した人)」に属するタイプだ。