交際相手が語った「両親との関係」
女性経験も豊富で、中学時代に2人、高校時代にも2人の交際相手がいた。大学以降も交際相手は途切れることがなく、出会い系サイトやナンパなどで不特定多数の女性とも関係を持った。第6回公判では、植松の高校時代の交際相手の供述調書が読み上げられたのだが、私はとりわけ次のような箇所に衝撃を受けた。
《私たちは、土日になると、お互いの実家を行き来していました。植松のお母さんは、「あら、かわいい子ね。サトシよかったじゃない」といって私にもやさしく声をかけてくれました。お父さんは、最初は無口で取っつきにくい印象でしたが、あるときお父さんに声をかけられてリビングに行くと、お昼ごはんにパスタを作ってくれていて、私が「おいしい」というと、「そうか」とお父さんもうれしそうで、徐々に打ち解けていきました。植松は、私とどこにデートに行ったかなど、何でも両親にオープンに話しており、植松の家族はとても仲が良さそうでした》
これまで謎に包まれていた植松の生育歴、とりわけ両親との関係が浮かび上がってきたのも、この裁判の成果の1つだろう。面会時の植松は、親との関係については一切口を閉ざしており、両親には私も取材依頼の手紙を出したものの、いまだどのメディアの取材にも応じていないからだ。
植松は、父親が小学校教師、母親は漫画家という家庭に生まれた一人っ子だが、「父親が教育者で厳格すぎたのではないか」とか「母親が表現活動に熱心で息子への愛情が不足していたのではないか」などさまざまな憶測が流れていた。私もまた、植松が親との関係に何らかの問題を抱えており、それが彼の人間性に影響を与えたのではないかと推測していた一人だが、どうやらそうではなかった。「ごく普通の温かい家庭」に育ったことが、第12回公判(2月7日)の鑑定医の証言などからも裏づけられることとなった。
一方、今回の裁判でまったく触れられなかった点を挙げると、その1つが、「ネット空間」が植松に与えた影響についてだ。