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ネット時代の普遍的な問題

 植松は「イルミナティカード」などに感化され、しだいに世界観そのものを乗っ取られるかのように思考をゆがめていったが、以前取材した大学時代の友人がこんなことをいっていた。

「仲間うちで、イルミナティカードとかはまったく流行ってなかったし、僕らはサトシが動画サイトにのめり込んでいたこともまったく知らなかったです」

 植松がヤフーニュースなどのコメント欄に差別的な書き込みをしたり、動画配信サイトに犯行予告めいた動画の投稿を繰り返していたことはよく知られているが、友人はこうもいう。

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「サトシがどこで一線越えちゃったのか、仲間うちで話すんですけど、みんなわからないっていうんです。考えられるのはネットの世界で持ち上げられたのが大きかったんじゃないかと」

本人のフェイスブックより

 それまで真面目でおとなしかった人が、ネットの差別的な言説に感化され、急激に意識が変容し、ヘイトスピーチに加わるというような現象が、今日ではごく普通に見られる。精神疾患とまではいえないが、妄想にとらわれ、執拗に弱者に攻撃的である点で植松と共通する。そこには、ネット時代に普遍的な問題が横たわっているように思う。

 そして、もう一つ残念なのは、弁護方針が「大麻などによる精神障害」に終始し、やまゆり園の実態解明につながらなかった点だ。

 やまゆり園で働き始めた当初の植松は、入所者を「かわいい」と感じていたと、多くの友人たちが供述している。にもかかわらず、何をきっかけに「この人たちは生きている意味がない」と考えるようになったのか。そのプロセスを、園の関係者や利用者家族らの証言を交え、もっと明らかにする必要があったはずだ。