昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/01/15

genre : ニュース, 社会

 現実問題で言えば、今回のような事故が起きたら大きなニュースとして報じられるため、仮に業者が事故物件であることを告知しなかったとしても、周りから見れば「あの事故が起きたアパートだ」とすぐにわかってしまいます。また、ガイドラインをさらに読み込んでいくと、「その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合」、つまり社会的に広く知られている事件や事故については告知が必要と書かれているため、やはり今回のような事案では、告知義務が生じると考えられます。

 しかし、これが築何十年の古いアパートで起きた事故であったら、ここまで大きく報道されなかった可能性が高いでしょう。その場合に、業者がガイドラインをどう判断するのか――。これは、かなり微妙な問題だと感じます。

※写真はイメージです。 ©iStock.com

事故物件であることを隠す業者

 こうした問題について、「事故物件だと告げないことが、そこまで悪いことなのか」と思う人もいるかもしれません。ときには、「事故物件だからといって、別に幽霊が出るわけでもないのに」「気にしなければいいだけだ」などと言う人もいるのですが、この問題はそうしたオカルト的な要素は一切関係なく、そもそも「告知義務」という、法律で定められたルールを遵守しない業者を信頼できるのか、という話なのです。

 自身に不都合な情報をちゃんと告知しない大家や業者がいたとして、「彼らは告知義務は果たさないけど、それ以外においては全ての点で良心的だ」と思う人はいないはずです。むしろ、告知義務を果たさないのは、その大家や業者が犯している悪事の“氷山の一角”だと思う方が自然ではないでしょうか。

 私自身、事故物件の情報は、その不動産を扱っている人が「良い大家なのか」「良い業者なのか」を見分ける、リトマス試験紙のようなものだと理解しています。

 ただ、世の中には事故物件とは定義されないものの、多くの人が「ここに住むのは避けたい」と思ってしまう物件も存在しています。次回は、引き続き昨年の事件を振り返りながら、そうした“事故物件という定義ではカバーできない不動産”についてご紹介しましょう。

後編に続く

この記事の写真(3枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー