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新宿の銭湯は「ガス代が1.5倍の70万円」、サンシャイン水族館は「イワシの水槽を18度に」 光熱費高騰の直撃を受けた人々が取る“ギリギリの生存戦略”とは

新宿の銭湯は「ガス代が1.5倍の70万円」、サンシャイン水族館は「イワシの水槽を18度に」 光熱費高騰の直撃を受けた人々が取る“ギリギリの生存戦略”とは

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 毎月の光熱費の請求書に戦々恐々とする日が続いている。全国的に例年以上の寒い冬を迎えているうえに、電気代やガス代の高騰で見たことがないほどの高額な請求額に言葉を失った人も多いだろう。

 生活に欠かせない電気とガスの値上げは一般家庭にとっても大打撃だが、常にお湯を沸かし続ける銭湯は最も影響を受けた業種の1つだ。

「昨年12月のガス代は70万円、1年前の12月は45万円だったので約1.5倍になっています。さまざまな対策を講じてはいるのですが、ガスと電気の値上がりがそれを上回っています。まだギリギリ黒字で営業できていますが、何も対策を打っていなかったらと思うとぞっとしますね」

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 ため息をつきながらこう語るのは、東京新宿区にある三の輪湯の店主・渡辺俊一郎さんだ。昭和7年の創業以来、地元の人々に愛されてきた老舗銭湯も、昨今のガス代の高騰に苦しめられているのだ。

新宿区にある三の輪湯。創業90年の老舗だ

「そりゃ、200万にもなるよな」

 ロシアのウクライナ侵攻という日本のいち企業にはどうしようもない問題でガスや電気といった光熱費が高騰し、昨年12月も大手ガス会社各社が値上げを発表。東京墨田区の大黒湯が「営業努力ではどうしようもない」とSNSに投稿した200万円近いガス代の請求書も話題になった。

「大黒湯さんは1日20時間ほど営業していて、営業終了後もボイラーを動かし続けているそうです。『そりゃ、200万にもなるよな』と同業者の集まりで話題になりました。ただ、ガス代の高騰が響いているのはどこも同じで、経営が厳しいのが現状です。このままだと店をたたむところも出てきて、ただでさえ少なくなっている銭湯が減ってしまうのではないかと心配しています」(渡辺さん)

 終わりが見えない光熱費の高騰。身を削る思いでコストの削減に腐心する現状を取材した。 

お風呂の温度を制御する装置

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 三の輪湯の渡辺さんがガス代が気になり始めたのは昨年の5月頃だという。

「ガス代が高いな、と感じ始めたのは昨年の春すぎですね。夏はお風呂の温度を少し下げるので自然に対応できたのですが、冬からは値上げが直撃しました。脱衣所の暖房の電気代や、お湯を沸かすボイラーの燃料代が必要になるからです。お湯の温度を43.5度から42.5度に1度下げたりもしましたが、焼け石に水でした。お客さんからも『ぬるくなった?』と言われてしまうこともあり心苦しかったです」(同前)