総務省の有識者会議「デジタル変革時代の電波政策懇談会」の委員で、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の第一人者として知られる藤原洋氏(68)が創業し、現在は会長を務める会社が、EV(電気自動車)工場の建設計画を巡り、鳥取県から約5000万円に及ぶ補助金の返還請求を受けていながら、約8年にわたって返還に応じていないことが「週刊文春」の取材でわかった。鳥取県と藤原氏が取材に対し、事実関係を認めた。
数多くの有識者会議で委員を務めてきた実績も
京都大学理学部卒の藤原氏は日本IBMやアスキーなどを経て、1996年に「インターネット総合研究所(IRI)」(東京都新宿区)を創業した。同社は1999年に東証マザーズ上場第1号企業として上場。2000年には「ブロードバンドタワー」(東京都千代田区)を設立し、2005年に大証ヘラクレス(後に東証ジャスダックに統合)に上場を果たした。
ベンチャー企業の経営の傍ら、深く関わってきたのが、政府のデジタル政策だ。IRIのHPには、藤原氏の公職活動として「総務省 ユビキタスネットワーク技術の将来展望に関する調査研究会 構成員」「総務省電波政策2020懇談会構成員」などと、総務省を中心に数多くの有識者会議で委員を務めてきた実績を掲げている。また、今年4月からは、仙台市の市長補佐官(デジタル担当)を務めている。
「2015年までに約1000億円」EV工場の建設計画
その藤原氏が2005年に創業したのが「ナノオプトニクス・エナジー(現ユニモ)」(鳥取県米子市)だ。ナノ社は2010年、広大な工場跡地を利用した電気自動車(EV)工場の建設計画を掲げ、鳥取県から企業立地事業補助金として約3億1000万円の支援を受けた。藤原氏は当時、こう語っている。
「1000万円以上の高性能EVスポーツカーを生産し、2015年までに約1000億円を売上げ、800人の雇用を生む」