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 ところが、実際には電動車いすを製造するなどしたものの、EV工場の建設は実現しなかった。ナノ社は大幅な債務超過に陥り、2014年には本社の土地の一部を約2億7000万円で売却している。これに対し、鳥取県は同年、ナノ社に対し、工場跡地の購入を目的とした補助金の一部など約5000万円の返還を請求した。しかし、約8年が経過した現在もなお、返還はなされていないという。鳥取県はナノ社が所有する不動産に対し、差押もしている。

 また、藤原氏は2012年にナノ社の社長を退いたが、現在も会長。同社のHPによれば、主要株主として実質的な支配権を持ったままだ。

鳥取県と藤原氏に事実確認を求めると……

 鳥取県に事実関係の確認を求めたところ、概ね次のように回答した。

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「補助金の交付対象であった固定資産の一部売却を行ったことから、売却収入のうち補助金相当分の返還を請求したものです。返還請求額は、約4578万円です。そのほか、奨励金一部返納・過払い委託料の未納(約770万円)もあります。(差押の理由は)地方公務員法の守秘義務に当たる事項ですので、ご回答できません。 県への返還が実現しておらず、残念に思っている」

登記簿には鳥取県や米子市の「差押」の事実が…

 藤原氏に事実関係の確認を求めたところ、メールで主に次のように回答した。

「(EV事業は)事実上私個人の10億円と鳥取県の補助金、約3億円の資金でスタートしました。まずは、広大な工場を活かして約13億円の資金でできることは何かということで、当時の社長の発案で電動車椅子事業(ユニモ)の始動でした。2年で数十台は売れましたが。13億円の資金投下に見合うリターンは、得られませんでした。

 資金繰りがひっ迫する中で、約15000㎡の土地売却話があり(コールセンター会社)、コールセンターは雇用促進にもなるので、鳥取県からも許可が出て一部売却することとなりました。土地面積に比例した補助金ということだったようで、後に、一部返還請求が来たと報告がありました。その一部返還請求に応えられていないのは、当時の資金繰り(人件費や光熱費)に資金が手当てされてしまったためだと思われます。

 債務返済のチャンスは常に追求しております。例えば、最近では、ほんの僅かですが不動産賃貸収入があった時に(編集部注:税金等の滞納分の)70万円の返却をしたと報告を受けております。また、不動産ディベロッパーの方から宅地転用への提案がありました。これによって、私個人への債務を除いて全て解消される見込みでしたが、残念ながら、先日もお答えしたように、市街化調整区域の見直しが必要で、米子市としては、空き家問題がある中で、宅地の供給過剰状況になるので認可できないとのことでした。現在は、円安が進む中で、製造業の復活を中心に、約60000㎡の工場跡地の再利用のチャレンジを色々検討しているところです。

 私は、技術者出身の起業家であり、自分の信念として、投資して頂いた資金は増やす、債務は法定利息に基づいて返済するという方針です」