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新宿の銭湯は「ガス代が1.5倍の70万円」、サンシャイン水族館は「イワシの水槽を18度に」 光熱費高騰の直撃を受けた人々が取る“ギリギリの生存戦略”とは

新宿の銭湯は「ガス代が1.5倍の70万円」、サンシャイン水族館は「イワシの水槽を18度に」 光熱費高騰の直撃を受けた人々が取る“ギリギリの生存戦略”とは

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飲食店などと違って値上げが簡単にできない?

 銭湯の苦境の理由の1つは、飲食店などと違い値上げが簡単にできないことだ。銭湯の入浴料金は自治体によって決められており、東京都では500円。昨今のサウナブームで銭湯の来客数は増えているが、ガス代の値上がり分を補うにはとても足りていない。

「入浴料金の値上げができない代わりに、貸しタオルやカミソリ、ジュースの販売価格を値上げすることで補っています。うちはサウナ代を10円だけ上げたのですが、他の銭湯では200円値上げたとか、サウナだけで1000円取るところもあります。でもそうでもしないと経営が成り立たないんです」

サウナはブームで人気だが…

 備品等の値上げ以外にも、空調の温度を調節したりボイラーを切る時間を少しでも早めたり、と細かい努力を続けてなんとかしのいでいる、と渡辺さんは表情を曇らせる。

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 銭湯の経営で最もコストがかかるのは、やはりお風呂を沸かすボイラーのガス代で、サウナに使う燃料の比ではない。

「湯船に入ってザブーンと湯があふれたりするのは、銭湯の醍醐味でもあるので全然気にしていません。困るのは、お風呂の温度を調節するための冷たい水を出しっぱなしにする人です。もちろんぬるめが好きな方もいるので使ってもらうのはいいのですが、自分がお風呂から上がる時に止めず、出しっぱなしにする人がいるんです。冷たい水を入れつづけながら、お湯の温度を保つためにボイラーを何時間もフル稼働する……という状況が一番厳しい。貼り紙で注意喚起はしているのですが、全員が見てくれるわけではないですからね」(同前)

 

 創業90年の老舗であるがゆえに、設備の老朽化も進んでいる。クーラーの修理や床の張替えなど、ただでさえ多くの費用が必要なところへ降りかかった光熱費の高騰に渡辺さんは頭を抱えていた。