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瀧井 朝世
2016/04/25

福井在住 三児の母 日課は柴犬の散歩――田舎の文学少女が本屋大賞作家になるまで【本屋大賞受賞記念対談 宮下奈都×瀧井朝世】

『羊と鋼の森』 (宮下奈都 著)

source : 週刊文春 2016年4月21日号

genre : エンタメ, 読書

右:みやしたなつ/1967年福井県生まれ。2004年、文學界新人賞佳作入選。『田舎の紳士服店のモデルの妻』『たった、それだけ』など著書多数。 左:たきいあさよ/1970年東京都生まれ。ライター。書評や作家インタビューを手がけるほか、「王様のブランチ」ブックコーナーのブレインも務める。

瀧井 このたびは『羊と鋼の森』での本屋大賞受賞おめでとうございます。

宮下 ありがとうございます。まだピンときていないんですよ。

瀧井 宮下さんは書店員さんからずっと支持されてきて、満を持しての受賞という印象です。まず、2010年5月にツイッター上で面識のない書店員さん同士が「各地の書店で同時に同じ本を仕掛けよう」と盛り上がり、そこで宮下さんの『スコーレNo.4』がプッシュされることになって話題を集めましたよね。2012年には『誰かが足りない』が本屋大賞にノミネートされましたが、作中の重要な日、10月31日には今でも多くの書店員さんがこの本のことをツイートしています。

宮下 私は福井に住んでいるので普段は書店回りもできないのに、本当にありがたくて。でもあまりに知名度が低くて、書店さんが私の本を売りたくても売れなかったんです。ここまで知名度が低い作家が本屋大賞をいただくことってなかったんじゃないでしょうか。

瀧井 そこまで低いとは思いませんが(笑)、でもまだそこまで知られていない作家の作品が受賞することは非常に喜ばしいですね。

宮下 今回受賞したことで、書店で本を手にとってくださる方が増えるとしたら、ご恩返しになりますよね。それがとっても嬉しいです。

瀧井 本作は紀伊國屋書店の書店員が選出するキノベス!2016でも1位を獲得、直木賞の候補にもなり、そして本屋大賞受賞となりました。新米調律師の青年の心の変化を丁寧に追う作品ですが、発想の源はどこにありましたか。

宮下 私自身がピアノが好きで、3歳の時に買ってもらったピアノをずっと使っているんです。調律師の人に「もう40年以上経っていますが大丈夫ですか」と訊いたら「まだまだ大丈夫です。このピアノの中にはいい羊がいますから」と言うんですよ。

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