日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年4月号より一部を公開します。

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サプライズ人事の真相

 植田和男新総裁の誕生は「日銀人事の歴史上、最大のサプライズ」(元理事)とされる。だが、植田氏と日銀の縁は長く深い。1998年から7年間、日銀審議委員を務めたことは知られているが、その後も金融研究所の特別顧問として、日銀のエコノミストたちに助言してきた。

「日銀にとっては身内そのもの。気心が知れている」(幹部)

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植田和男日銀次期総裁 ©時事通信社

 最有力候補だった雨宮正佳氏(昭和54年入行)は理事や副総裁として、金融政策だけでなく人事や危機管理も担ってきた。「雨宮さんは仕事に厳しく恐い上司だった。植田氏の方が担ぎやすい神輿」(局長級)との見方もあるほどだ。

 日銀の関心は、人事を誰が仕切るかに移っている。副総裁の内田眞一氏(61年)はエリート街道を走ってきたが、同僚たちと一体感をもって仕事をするタイプではない。「クールというより冷たい。行内に友人が少なく、まともな人事ができるのか」と首をかしげる課長もいる。

 期待されているのは副総裁に就く氷見野良三前金融庁長官(58年、旧大蔵省入省)だ。大蔵省OBには尾崎護元事務次官(33年)ら論語好きが多いが、氷見野氏は「論語を含む四書五経全般に通じている教養人。6カ国語を操り、古代ギリシャ哲学にも詳しい」(元金融庁局長)という。

 だが学究肌の氷見野氏は政治家の懐に飛び込むのが得意とは言えない。自民党の麻生太郎副総裁が後見人のような立場だが、「最後は財務省に頼るしかない」(官邸筋)と見られている。